TV考察


VOL3.電波の届く距離について・続編  ※2001.5.11訂正

以前、本サイトの BBS で、沖縄県TV事情編集者さんと以下のようなやりとりがあった。


僕の発言:
ところで、沖縄まではかなり距離がありますが、テレビ中継回線ってどうなっているんでしょう?
普通のNTT中継回線・・・かな?

沖縄県TV事情編集者さん:
> NHK、RBC,OTVに関してはその通り、
> QABもおそらくそうでしょう。島づたいにNTTの鉄塔がありますから。
> ただ、光ファイバーが宮崎から引かれているのでこれに代わったかも。

僕の発言:
島伝いに中継。そうだったのか!
鹿児島〜沖縄間は、ず〜っと海とばかり思っていました(^^;
地図で確認してみると、ちょうどいい間隔で島が点在していますね。
最長スパンでも100kmくらいかな?
それに各島にある山は結構標高が高い!
見通し距離通信はバッチリって感じでしょうか。


九州(鹿児島)から沖縄(那覇)までの直線距離は約650km。
ほとんどが海上区間である。

現在は光ファイバーや通信衛星経由での伝送かもしれないが、 これまではNTTマイクロ波中継回線によって この超長距離を見通し距離通信にて繋いでいたわけだ。

もし、1回の中継で伝送するのであれば、送信側で必要となる高さは約3万2000m。
K2の4倍くらいか・・・。いや、衛星軌道だ(笑)
当然それは無理なので、途中に何箇所も中継所を設置し、順送りで届けていく。

地上の場合、見通し距離内で通信できるように中継所の場所を決定し、設置していけばよい。
ルート上の見通しが厳しいようであれば、途中にもう一つ中継所を設置すれば解決する。
用地取得や電源確保、予算の問題はあろうが、比較的容易であると思われる。


しかし、鹿児島−沖縄間は事情が違う。
海上なのだ。
島伝いである以上、「途中にもう一つ中継所を」は不可能である。

うまい具合に島が存在し、しかも見通し距離内となるような高さに中継局を設置する・・・
果たしてどのように実現しているのであろうか?

局名 所在地 空中線高
(m)
相手局 局間距離
(km)
見通し距離
(km)
鹿児島 NTT鹿児島局 70 木床 19.5 151.4
木床 薩摩半島・烏帽子岳 550 永田 116.0 316.3
永田 屋久島・宮之浦岳 1,850 十島 128.2 319.3
十島 悪石島・御岳 580 朝戸 124.2 203.6
朝戸 奄美大島・朝戸峠 350 油井 25.9 193.3
油井 奄美大島・油井岳 480 井之川 57.5 225.1
井之川 徳之島・井之川岳 645 知名 60.3 195.4
知名 沖永良部島・大山 245 国頭 64.3 114.3
国頭 沖縄本島・辺戸岬 70 多野 34.4 128.2
多野 名護市・多野岳 345 首里 53.0 150.4
首里 那覇市・弁ヶ岳 170 沖縄 5.1 101.9
沖縄 NTT沖縄局 70 −−− ---- ----
座間味 読谷村・? 70 沖縄 19.2 79.6
本部 本部町・八重岳 450 座間味 29.5 140.8
伊是名島 伊是名島・チジン山 120 本部 33.1 153.1
辻宮 与論島・? 50 伊是名島 50.1 85.8
和泊 沖永良部島・国頭岬 50 辻宮 49.9 67.3
手々 徳之島・天城岳 530 和泊 54.9 143.2
恩勝 奄美大島・松長山 430 手々 72.5 208.2
宝島 宝島・イマキラ岳 290 恩勝 91.1 179.7
口之島 口之島・前岳 625 宝島 114.1 200.0
口永良部 口永良部・古岳 640 口之島 61.1 239.4
花瀬 大隈半島・木場岳 890 口永良部 96.9 262.4
鹿児島 NTT鹿児島局 70 花瀬 57.2 181.8
そこで今回、鹿児島−沖縄間の中継ルートと見通し距離を調査してみた。

右上図が鹿児島−沖縄(那覇)間のルートである。
ルートが2本あるのは予備回線確保のため。
“通信不能”は許されない。

右表は送受信局・中継局と見通し距離の一覧である。
なお、所在地・空中線高・局間距離は地図上から推測したものだ。
実際とは異なるかもしれないが、ご容赦願いたい。
前回VOL.2で説明した通り、見通し距離は送受信点の高さから求められる。


さて、結果はどうだろう?
一部、見通し距離ギリギリの区間もあるが、うまい具合に収まっている。
これは見事だ!
まあ、そのように設計したのだから当然なのだが(^^;

これは、多くの島々の標高が高いことが幸いしている。
口之島中継局のある口之島など、周囲20km未満の小島であるにも関わらず、 最高標高が628mもある。(前岳)
まさに中継所を設置すべく出来た島のようだ(笑)


しかしながら、各島々への中継局建設はかなり困難な工事であったのだろう。
資材運搬の港や道路の確保、電源(発電)設備の設置・・・。
全国ネットワーク完成を目指した、先人の苦労と情熱が偲ばれる。


あとがき
通信衛星による中継が主流となった現在、地上の中継回線はどのような未来があるのだろう?
通信需要の拡大に伴い、光ファイバー網もどんどん整備が進みつつある。
中継回線を個人的に受信しておられる方にとっては、SNG回線デジタル化に次いで訪れる
悲劇的な状況になるのかもしれない。


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