VOL2.電波の届く距離について ※2001.5.10訂正 当たり前の話だが、地球は丸い。 電波は直進的に進行するので、通常は地平線(水平線)の向こう側では直接的に電波を受信できない。 ただし、長波(LF)〜短波(HF)は地平線の向こう側でも受信できる。 これは短波以下の周波数(30MHz以下)の電波は、地球上空にある「電離層」に反射するため、 地平線の先まで電波が届くためだ。 「夜間は遠方のAMラジオ局が入るよ!」 と、言うのは中波のAM局は電離層反射で受信できるためである。 送信所→電離層→地表→電離層→地表→電離層→お家、こ〜んな超長距離パスも可能だ。 (反射のたびに減衰するので困難ではあるが・・・) さて、テレビの場合はどうだろう? 地上波テレビは超短波(VHF)・極超短波(UHF)という電波を使用している。 VHF/UHF帯の電波は電離層を突き抜けてしまう。 よって、論理的には地上波テレビは送信所(中継所)が見通せる範囲でないと受信できない。 では一体、送信所の電波はどの辺まで届いているのだろうか? これは地平線までの距離を計算すれば求められる。 「アンテナ位置〜地平線位置〜地球中央」を辺とする直角三角形を作り、 上記の通り三角関数によって地平線までの距離が得られる。 なお見通し距離=送信点→地平線距離+地平線距離→受信点、である。 [追加情報] 地球上での電磁波伝播は、大気密度の差(上空ほど空気が薄い)により屈折が生じ、地球表面に沿うように湾曲して進行する。 これは直線的進行に比べ、実際の電波は遠くまで届くことを意味する。 このため、地球上での電波や光の伝送距離を求める場合、一回り大きな地球を仮定し計算する。 この“一回り大きな地球”の半径を「等価地球半径」といい、実際の半径(6370km)に4/3(約1.33)を乗じる。 ■チェックしてみよう! ※訂正済み(等価地球半径を考慮) 送信点=東京タワー(約330m)、受信点=2階建ての屋根上(10m) と仮定し計算した結果、見通し距離= 「意外に範囲狭いな〜」という印象では? 「東京タワーは100kmをカバーすべく、高さを333mとした」は本当でした。 このため、各テレビ局はサービスエリアをカバーすべく、なるべく遠くまで電波を届けられるよう 高い場所から電波を発射している。当然高い位置のほうが遠くを見渡せるためだ。 一般的には山頂に、平地の場合は高〜い送信塔を建てて対応している。 逆説的に言えば、受信側の位置を高くしてもOKだ。非現実的ではあるが(^^; 僕が受信している新潟局(弥彦山648m+送信タワー40m)でも計算してみた。 結果、 自宅まで直線距離は約185kmなので、論理的には受信できるワケがないのであった。 ・・・でも映ってるんだよなぁ。これが。 大気密度は気温によって変化(暖かい→膨張→密度小)するので、等価地球半径も変化する。 よって、気温の高い夏季は新潟局も見通し距離通信なのかも? あとがき 実際の電波伝播では山岳回折、海面反射、ラジオダクト、Eスポ、等の様々な要素が加わる。 また、見通し距離内でも送信出力と減衰量の関係で受信できない場合もある。 目には見えない電磁波、しかも完全に正体が解明されていない。 だからこそ遠距離受信は面白いのかもしれない。 |