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ペリーヌ物語★物語の比較

アニメ
第44話 いじわるな夫人
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テオドールの母親で、ビルフランの姉のブルトヌー夫人が屋敷に来る。夫人はペリーヌの様子をうかがいに来たのだった・・・

<原作>

ブルトヌー夫人のマロクール訪問をビルフランから聞いたペリーヌはその事をベローム嬢に伝えた。するとこの知らせを受けた時から先生は珍しい熱心を示すのであった。・・・先生はどうしたんだろう?ペリーヌの疑問に先生が帰る少し前に答えてくれる。
私はあなたに勧めておかなければならないが、明日、訪問なさる御婦人に向かってあなたは控えめにして、遠慮していなければなりませんよ
どういう事を控えめにするのですか?何を、どんなふうにして遠慮するのですか?」ペリーヌの問いに対してベローム嬢は・・・

・・・詳細・・・

ブルトヌー夫人がマロクールに来た目的はアニメと同じです。

アニメではブルトヌー夫人はペリーヌの見舞いを兼ねて部屋に行きますが、原作ではベローム嬢の忠告に従ったペリーヌが極力ブルトヌー夫人を避けた為、業を煮やしたブルトヌー夫人が部屋まで押し掛ける。部屋での会話の内容はアニメと似てますが、原作ではより突っ込んだ会話をしています(ペリーヌは言いたい事を我慢してボケ役?に徹しています)

アニメではブルトヌー夫人が晩餐の席でペリーヌの服装について貶しますが、原作ではリーヌの部屋で忠告します。この時、ブルトヌー夫人はタンスの中の下着もチェックしています。アニメでは晩餐の席でビルフランが「エドモン」のボスニアからの情報を公表しているが原作では日時と場所が違う。

アニメ
第45話 ボスニアからの知らせ
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或る朝、突然フィリップ弁護士がエドモンの情報を持って事務所にやってくる・・・

<原作>

ビルフランは各地の新聞にエドモンの情報を求める広告を毎週載せていた。(ビルフランは悪質な行為を避ける為、自身の身元は伏せてアミアンの銀行家を情報の受け取り先に指定していた
そんなある日、ボスニアのセラジュブォから考慮に値する手紙が送られて来た。それには「セラジュブォの銀行家に40リーブル寄託して下されば、昨年11月に遡るエドモン氏の正しい消息を提供する」というものだった。「ほうれ、どうじゃ!わしのいう事に間違いないわ、近いぞ、11月じゃ」ビルフランは喜び、捜索して以来はじめて甥やタルエルに息子の事を話した。「わしはエドモンの消息の知れたことをお前達に言うのが大変嬉しい、エドモンは11月にボスニアにいた」・・・この噂が土地に広がると人々の驚きは大きかった。

以上の部分はアニメでは44話の晩餐の席で行われています。アニメでの、フランソワァズがファブリにエドモンの情報を尋ねる部分と、ビルフランとブルトヌー夫人の会話(ペリーヌの部屋に行く前)は原作ではビルフランとペリーヌが直接会話しています(若干、内容は異なりますが・・・

或る朝、エドモンの情報を携えたアミアンの銀行家(アニメではフィリップ弁護士)が事務所にやってくる。その後のビルフランとの会話の流れは共通です。

原作での、銀行家(フィリップ弁護士)が事務所に来たときのタルエルとの会話・・・
察しますに悪い知らせで?
悪うございます
でも、あの・・・
悪うございますな」「ビルフラン様は事務室におられますか?
確かにおられますが
まず、ビルフラン様にお話をしなくちゃあなりませんので
しかし
お分かりでしょう

原作ではアニメと違いタルエルに、はっきりと「悪い知らせ」と明言しています。エドモンの死亡日時は11月7日(アニメでは3月19日)です。

エドモンの死を知ったビルフランは瀧の様に涙を流しながらタルエルと二人の甥を呼び、事の次第を告げる(アニメでは異常を察したタルエルとテオドールが自ら部屋に入るが、原作ではビルフランが電鈴(ベル?)のボタンを押して呼んでいる。その時の会話と行動はアニメと共通です。

アニメ
第46話 ビルフランの悲しみ

第47話 オーレリィの顔

 第48話 火事                        

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エドモンの死を知ったビルフランは遂には病の床に着く・・・

<原作>

ビルフランが屋敷に戻ってからエドモンの葬儀に到るまでの流れはアニメと共通です。
教会から出てきたペリーヌにベローム嬢が声を掛けてくる(アニメではファブリ)。
その後のペリーヌとベローム嬢の会話は、アニメのペリーヌとファブリの会話に大筋で似た内容です。エドモンの葬儀から帰ったビルフランは再び部屋に閉じこもる。バスチアンはお手上げの状態でペリーヌに言う、
お互いに力になり合わぬことには
私なぞに何が出来ましょう
あなたは大したことが出来ますわい。ビルフラン様はあなたを頼りにして
おられるし、愛しておられるし

愛して!
私は自分が何を言うか心得ておりますわい。大したことですぞ、それは

葬儀の翌日からビルフランは工場に出向く、が全く生気が無く、工場にいても「まるでつんぼで眠ってでもいるように、意見も命令もただの一言もいわない」状態であった。精神的な落ち込みに加え、持病の悪化が追い討ちをかけビルフランは一週間部屋にこもり工場はタルエルに任せた。

「第47話 オーレリィの顔」は、「日本アニメーション」オリジナルです。

その後、病気の方は快方に向かうが精神的な落ち込みは、まだ続いていた。ペリーヌはビルフランの容態をリュション先生に聞こうとするがリュション先生は、ペリーヌのことを相手にはしてくれなかった(アニメとは大違い!)結局、ビルフランの容態はバスチアンとベローム嬢から聞く事となる。二人の話によると、命には別状はなく、生活に張り合いが必要で何か活を入れる事が良いとのことであった。依然として工場にいても全てをタルエルに一任するビルフランであった。或る日の午後、工場巡回の帰りにビルフランとペリーヌは火事に遭遇する。

火事の現場での出来事はアニメと同じです。ただし原作ではファブリは最初から現場で消火の指揮をとっています。

事務所に戻ったペリーヌはアニメ同様、ビルフランに火事で犠牲になった子供たちの葬儀に出席するのかと尋ねる。その時のペリーヌは・・・

「愛情を起こさせるものは愛情でございす。人というものは自分を愛してくれると思う者を愛するものでございます。自分が他人の友達になってやれば、他人も自分の友達になってくれるように思われます」・・・と言っています。

アニメ
第49話 幸せの涙が流れる時

第50話 初雪の降った日

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翌朝、ビルフランはファブリを呼んでルアンへ行くよう指示する。ルアンに評判の良い託児所が在るので、それに関する詳しい情報を調査するためであった。そして、三ヶ月以内に自分が経営する全工場に託児所を設置する事を話す。その晩、ペリーヌに稽古を教えていたベローム嬢に、ビルフランは託児所の話をして、そこの施設長になるよう頼む。ベローム先生は承知しないわけにいかなかった、が先生にとっては犠牲があまりに大きかった。先生にとって教育は生活の中で唯一、楽しみだったからである。

おぉ!あなたは教育というものがどんなものか御存知ありません
子供らに知恵を授けること、これは結構なことで、わしも心得ておる、が子供らに生命を与え健康を与えることも、これまた有難いことで、これはあなたがなさるお仕事ですわい。お断りになるほど小さなことじゃありませんぞ
それに私も、自分の都合ばかり考えておりますと、あなたに選んでいただいただけの値打ちのないものになってしまいますから・・・では結局、私も生徒になりましょう、学ぶ事柄はたくさん出来ましょうし、そうすれば教えたいとする私の要求も、もっと広い意味で満たされるというものです。私は心からあなたを信頼しております。そしてこの心は、外に表せないほど感動しております、感謝や驚嘆の念でいっぱいで・・・」
感謝ということを仰るのなら、その言葉は、私にでなくあなたの生徒にかけて
下さい。この娘が、その言葉や暗示で、それまでわしが知らなかった考えを呼び起こしてくれ、これから歩かにゃならぬ道程に比べたら物の数でもないほんの二三歩しか未だ歩いておらぬ一つの道へ、わしを引きこんでくれたのじゃからな


これを聞いたペリーヌは喜びと誇りに元気付いて言った。
まあ!ビルフラン様、では、さらにもう一歩お歩きになったら
どこに行くのじゃ?
どこか今晩私の御案内致しますところへ

夜中にペリーヌはビルフランと共に女工達の宿を訪れる。その後のビルフランの反応はアニメと同じです。アニメではロザリーとファブリも同行するが、原作では二人で歩いて行く。

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ペリーヌがマロクールに来て今日でちょうど1年と1ヶ月、同じ日曜日であった。
昨年から比べるとマロクールは見違えるほど変化を遂げていた。
丘に在る森の一角(ペリーヌが「お祖父様〜」と叫んだ所?)には病院が建設中で、工場の正門付近には保育所の屋根が確認できた。そして、村の中心には工員達の社宅、食堂、居酒屋などの群が目を引いた。しかし、何よりも変化が著しいのはビルフランの屋敷であった。屋敷の周りを囲む芝生に続く下方の地域が公園となり、村の住民や工員達に
開放されていた。そこには数多くの遊具と劇場、舞台、そして読書室や会議室、それに労働者クラブも作られていた。マロクールがここまでに成るまでには地元の下宿屋、居酒屋、商店は勿論、ビルフラン氏の親族からも反対の意見が出た(アニメではテオドールがビルフランに、ペリーヌから別れるように忠告しています)そして、その矛先はペリーヌに向けられたが、今の彼女は多くの愛情に守られていた。(原作では、タルエル、リション医師、ベローム嬢、ファブリ、他・・・

その日曜日、ビルフランは何時に無く苛立っていた。
ビルフランはペリーヌには内緒の用事でパリへ調査に行っているファブリの帰りを待っていた。ファブリが朝、パリからうった電報には・・・「情報完全、公文書、正午着く」とだけあった。
零時半を過ぎてもファブリが到着しない為、いよいよビルフランは給仕を呼び「誰か来てもわしは引き入れぬぞ!」と言った。ペリーヌはこれを聞いて驚いた。何故なら日曜日は、子供でも大人でも話したいという人達を皆、引き入れるのが習慣だったからだ。
アニメでは逆にタルエルがビルフラン邸を訪問した時、ビルフランは「タルエル君、日曜日なのに仕事の話かね・・・」と日曜日の訪問を無作法のように言っています。

・・・予定より遅れてファブリが戻ってきた・・・
ファブリが部屋に入ってきた時のペリーヌに投げた眼差しにペリーヌは何かしら不安を感じた。ファブリは調査の結果をペリーヌの前で話しても良いかとビルフランに尋ねる。今までにファブリがこの様な事を言ったのは初めてだったのでペリーヌの不安は一段と高まるのであった。
あなたが調査を依頼なさった代理人の予想通り、何度も足跡が分からなくなりましたが、そのお方はパリへおいでになりました。そこで死亡証書を調べてみますと去年の6月にエドモン・ビルフラン・パンダボアヌ氏未亡人マリ・ドルサニという証書を見つけました。これがその証書の正本でございます」ファブリはそれをビルフランの震える手に渡した。
読みましょうか?
名前は確かめたか?
それはもう
では読まんでもよい、後で見よう、話を続けてくれたまえ
私はその証書だけでは済まさずに、その方の亡くなられた家の持ち主、鹽爺さんというのにも問いましたし、またその気の毒な若い御婦人の臨終に立ち会った侯爵夫人という街の唄うたいや古靴屋の黙り屋さんなどという連中にも会いました・・・・・中略・・・・・この人々はラ・ルクリという屑屋のうちに私を案内してくれまして私の調べはつきました。その屑屋には昨日田舎から帰ったのに会ったばかりのところです
ファブリはひと息ついた。そうして始めててペリーヌの方に向いて丁重に挨拶した。
お嬢様、パリではパリカールにも会いましたよ、元気にしておりました

このセリフはアニメでもフィリップ弁護士が言っています・・・が、その時のペリーヌの心境はアニメと原作では雲泥の差があります。アニメでは、このセリフの時点ではペリーヌはまだ状況を把握していませんが、原作ではこの時点で既に自分の素性がファブリの手によってビルフランに明かされつつある事を自覚しています。

既にこのちょっと前にペリーヌは立ち上がっていた、そうして茫然として眼をそそぎ耳を傾けていた。涙が瀧のようにながれた。
母に相違ないことが決定しますと、あとはその娘御がどうなられたかを知らなければなりませんでした、これはラ・ルクリが教えてくれました、シァンチイの森で一人の娘が可愛そうに飢えて死にかけていたところをその娘の驢馬が見つけて会ったのだということで
これ、お前!」・・・ビルフランは頭から爪先まで震えているペリーヌのほうに向いて叫んだ。
言わぬのか、なんでその娘は名乗って出なかったのじゃ?説明してくれぬのか、
若い娘の気持ちをよう知っておるお前?

・・・
ペリーヌは一二歩前へでた、ビルフランは続けて・・・
なんでその娘はわしのひろげた腕の中に来ぬのじゃ?お祖父さんの・・・
おお!
腕の中に・・・
ファブリは祖父と孫娘とを差し向かいにして引き退つた。しかし、二人はひどく感動していたから、何も言わず手を取り合い、ただ愛情の言葉を交わすだけだった。
わしの娘、わしの可愛い孫娘!
お祖父様!

アニメではテオドールが立ち会っていますが原作では勿論いません。この後、ペリーヌはビルフランに今までの経緯、そして両親の話をしています。
アニメでは「
第50話・初雪の降った日」の前半部分に相当します。

原作では
ペリーヌがビルフランに話をしている最中、ビルフランが外から聞こえる群集のざわめきに気付き、ペリーヌに何事か?と尋ねています。群集の正体が職工とその家族で、きょう誕生日のビルフランを祝うために集まっていることをペリーヌから聞いたビルフランは窓辺に立ち、集まっている人々から祝福を受ける。ビルフランはその場で「孫娘」を集まっている人々に紹介しています。アニメでは「この部分」の設定が非常に小さく変更されています。即ち、群集(職工とその家族)が御屋敷(ビルフラン邸)の召し使い達に変更されています。・・・第50話の後半は「日本アニメーション」オリジナルです。

アニメ
第51話 おじいさんの目

第52話 忘れられないクリスマス

第53話 春の訪れ

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今のビルフランの希望はペリーヌの顔を一目でも見たい・・・日々に増す思いの末ビルフランは・・・

<原作>

この部分はアニメと原作、どちらも同じ話の流れになっています・・・と言うより、どちらかといえばアニメの方がオリジナルを加えて親切?丁寧に作られている様に感じられます。
アニメ、51話〜53話に出てくるクリスマス関係の話、ロザリーとその家族、マルセルとサーカス団の話は「日本アニメーション」オリジナルです。原作では、ペリーヌが秘書の仕事に就いてからは、ロザリーの登場場面は1・2回のみです(名前は二三出ますが・・・)。

眼の手術も無事成功し、ペリーヌの顔を見る思いが叶った今、ビルフランの最大の願いは作業を見ることだった。作業の見学当日、ペリーヌはバスチアンにココを無蓋馬車につけるよう命じた。「すぐに致します。お嬢様バスチアンのこの返事の調子とその微笑みとに彼女は驚いた。が、寒い目にも暑い目にもあわせないよう、お祖父様に着物を着せるのに忙しかった彼女は別段注意しなかった。やがてバスチアンは戻ってきて馬車に馬をつけたことを告げた。二人は石段の上へ出た。ペリーヌは一人で歩く祖父様から眼を離さずに一番下の段まで来た、するとびっくりするような嘶きがしたので彼女は顔を向けた。こんなはずはないが!馬車には一匹の驢馬がつけられていて、その驢馬がパリカールに似ている、もっともパリカールといっても、つやつやして、手入れの行届いた、木靴も立派で、青い小總(ふさ)のついた黄色の美しい馬具をつけている、そうしてそれが、頸をのばして絶えず嘶きつづけ、侍童におさえられながらペリーヌのほうへ来ようとしている。
パリカール!」・・・頸へとびついて頬ずりした。「あぁ!お祖父様、うれしい不意打ち!

原作ではパリカールはファブリの発案でラ・ルクリから買い戻している。
事務員一同から、むかしの同僚へのプレゼントらしい

この後、二人は池の隠れ小屋、保育所、職工たちの住宅、宿舎、レストラン、クラブをまわり、マロクール村を出るとサン・ピポア、フレクセール、バクール、エルシュの村々へ行った。これらの村々では建築はマロクール村ほど渉っていなかった、しかしもう大たいその完成の時期は見当がついていた。一日は良く満たされた。彼らは日の暮れ前をゆっくりと帰って行った。すると丘から次の丘へ移りかけた時、彼らは、もくもくと煙を吐く高い数々の煙突をかこんで到るところに新しい屋根の見えるこの地方を見わたすことができた。
・・・ビルフラン氏は手をのばして・・・
見よ、お前の仕事を、あの設備を。わしは事業熱に曳きずられて、ああいう設備のことは考える暇もなかったわい。しかしあれを継続させてゆこうとするなら、お前は夫を持たなければならぬ。お前にふさわしい、そうして、わしらのためにも皆のためにも働いてくれるという夫をな。それ以外に望む条件とてはわしらにはない。
ところでわしは、わしらに必要な気性のよい男が見つかるつもりじゃ。そうしたらわしらは幸福に・・・
家庭を作って暮らすことができる」 

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先に書いたように、この部分はアニメと
原作どちらも同じ話の流れになっています。
唯一、大きく異なるのは舞台背景の季節です。

アニメでは、
ペリーヌの身元が明かされたのは「初雪が降った日」つまり初冬です。
原作では、ペリーヌがマロクール村に着いた日から十三ヶ月後、晩夏?です。
ラストシーンも、アニメは春ですが原作では晩秋(?)です。


物語の比較は以上です。
今後、気付いた箇所が在ればその都度追加していきます。

( ^-)_旦~~  ~~旦_(∩_∩ )         ・・・管理人・・・

参考資料

岩波書店、岩波文庫 「家なき娘」
津田 穣(訳)

偕成社、偕成社文庫 「家なき娘」
二宮フサ(訳)

日本アニメーション 「ペリーヌ物語」

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