最後に血圧の話しをします。これも食事と深く関わってとても重要です。
腎不全を悪化させる最大の原因は何でしょうか?タンパク質の過剰摂取も大きな危険因子ですが、
もっとも影響の大きな因子は血圧だと思います。『なーんだ』なんて言わないで下さいね。
非常に大切な話なのですから。
最近の数年間で、腎不全と血圧に関する大切な研究が多く発表されました。
その結果、どのくらいの血圧を保てば腎不全は血圧の悪影響を受けないのか、概ね結論が出たと言えます。その結論とは、次の(1)(2)です。
(1)
| 慢性腎不全例では、血圧はなるだけ低いほうが良い。
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(2)
| 1日尿蛋白量が1gを超える場合では、平均血圧を92mmHg以下にすること。1g未満では98mmHg以下にすることです。
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平均血圧とは、収縮期血圧(血圧の上の値)と拡張期血圧(血圧の下の値)の下3分の1の値のことです。
例えば、140/80mmHgの血圧では、上下の差は60です。これを3等分すると20ですね。
だから下3分の1は、80+20=100となります。つまり、140/80mmHgの平均血圧は100mmHgとなるわけです。
平均血圧が92mmHgや98mmHgとはどんな血圧でしょう。
125/75mmHgであり、130/80mmHgです。びっくりするくらい低い血圧と思いませんでしたか?
でもそうなのです。尿蛋白が1日1g以上出ている方は、125/75mmHg以下に血圧を保たないとそれだけで
腎機能は低下するのです。125/75mmHgで良いのではありませんよ。それ以下で、低ければ低いほうか良いのです。
当然のこと、これを達成するためには、毎日の血圧の監視も必要ですし、降圧剤も用いないと実現不可能でしょう。
しかし、それだけではなく、食生活上、厳しい塩分制限が必要なのです。
日本人の平均塩分摂取量は、1日に13-14gとされていますが、これをがんばっても6g以下にする努力が必要です。
というのも、慢性腎不全の血圧は食塩感受性、つまり、塩分が多い食事では血圧は上昇するし、薄い食事では血圧は
低下します。慢性腎不全では、ほぼ100%の方に高血圧が発生し、腎不全が悪くなると高血圧は手強くなって、
ますます降圧剤がたくさん必要になります。だから、血圧を制御するには塩分の多い食事をしている余裕がないのです。
このことは、同じ降圧剤を用いても、塩分制限が厳しいほど、その効果がより強く現れ、塩分制限が甘いと、
降圧剤の反応も弱くなります。
慢性腎不全の食事療法は低蛋白食療法が基本ですが、この中には、塩分制限も組み込まれたものとしてご了解ください。腎不全治療はこのどれひとつ欠けてもうまくいきません。
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