ところで、大切な栄養素のタンパク質を制限したら、栄養不良に陥る心配はないか?
こうした疑問を持った方はいませんか?
タンパク質は食べたあと消化されて、血や肉となるコースと、エネルギー源として最後まで燃焼される
コースの2通りに分かれます。ここで、十分にカロリーが摂取されていることを前提条件として、
1日に最低限必要な蛋白量は、'血や肉コース'が1日20-30g前後とされています。
日本人の平均摂取タンパク質量は1日70g前後ですので、食べたタンパク質の約3/4が'燃焼コース'に
振り分けられていることになります。この'燃焼コース'の部分から、燃えカスが、尿毒素として、あるいは、
酸として排出されるわけです。ここが低蛋白食療法のミソとなるところです。
低蛋白食療法ではこの'燃焼コース'のタンパク質をほとんど切り詰めて最低限にし、一方、体を良好に維持
するための'血や肉コース'のタンパク質をしっかりと食べる必要があります。なんだか、一方で切り詰めて、
また、しっかり食べるなんて矛盾した印象を受けるかもしれませんが、そうではありません。実は、
タンパク質には様々な種類があり、'燃焼コース'にふさわしいものと、'血や肉コース'に適したものがあるのです。
タンパク質にはあらかじめそれぞれの再利用率が定まっていて、それを'蛋白価'と呼びます。
例えば、お米の蛋白価は約60-70%とされていますが、お米を食べると、そのタンパク質の60-70%は
'血や肉コース'に、そして残りの30-40%は自動的に'燃焼コース'に振り分けられる運命にあります。
これでは米タンパクを食べても、燃えカスが出るのは避けられないことになります。一方、肉、魚、
ミルクの蛋白価はほとんど100%とされているので、食べればそのすべてが'血や肉コース'にまわりうるわけです。
だから、低蛋白食療法では、タンパク質はトコトン切り詰める一方、食べるタンパク質をよく吟味して、
タンパク価の高いものを食べなければいけません。
さらに、重要なことがあります。
それは、この治療法が十分にカロリーを摂取していることが前提であるということです。
あくまでもタンパク質がエネルギー源として必要のない状況です。
エネルギー源は、糖質、脂質、タンパク質の3大栄養素に限られます。
一般健常人の平均的なエネルギー摂取は、糖質で約60%、脂質で25%、タンパク質で15%とされています。
このタンパク質15%に相当するエネルギーが、先で説明した'燃焼コース'の部分であるのはもうお分かりですね。
低タンパク質療法では、この15%を、糖質や脂質でカバーする必要があるのです。もし、補わないとどうなる
でしょう・・・・? 体は、不足分の15%を調達するために、体の中に蓄えられたカロリーをまず消費し、
蓄えが底をつくと、今度は体を破壊してカロリー源にします。要するに'やせ'るわけです。つまり、
カロリーを手当てせず、単に蛋白制限のみ行うと、どんどんやせてしまって非常にマズイことになるのです。
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