腎不全の末期の状態が『尿毒症』です。この症状をひき起こす尿毒素こそが過剰負担の原因物質です。
では、尿毒素とは何でしょうか?尿毒素の分類はいろいろありますが、共通した特徴があります。
その多くは、タンパク質の代謝産物であることです。低蛋白食療法の狙いのひとつは、
この尿毒素の元となるタンパク質の摂取を制限し、尿毒素の産生を極力抑制することにより、
残っている正常ろ過器への過剰負担を緩和することです。例えば、代表的な尿毒素である血液尿素窒素(BUN)は、
健常人では20mg/dl以下ですが、腎機能が1/10に低下して、もう透析導入の頃には、BUNは100mg/dlに至ります。
これくらい高値になりますと、吐き気や食欲不振など消化器症状をはじめとする様々な尿毒症の症状が出現します。
ところが、厳しい低蛋白食療法を実施している方では、この値は40-50mg/dl程度に収まり、全く自覚症状はありません。
体内環境は良好に維持されている結果、透析はまだ導入する必要はありません。
低蛋白食療法には、尿毒素の産生を軽減する効果のほか、蛋白制限によるP(リン)やK(カリウム)の蓄積を
抑制する効果もあります。P(リン)は65%が、K(カリウム)は95%が腎より排泄されます。
腎不全状態では排泄障害のために蓄積し、これらの電解質濃度が上昇します。
骨や心臓を中心として全身に重大な悪影響が生じます。蛋白制限食により、この異常も回避することができます。
さらには、体内の酸、アルカリのバランスにも良い効果があります。人が生活すると必ずゴミがでます。
家庭のゴミはゴミ収集日に袋に入れて出すでしょう。このゴミに相当するのが酸です。
人体では、酸は腎臓や肺から体外へ排泄されます。肺からは二酸化炭素として、腎臓からは、
それ以外の形の酸が排泄されます。末期腎不全の尿毒症では、腎臓からの酸排泄が不十分になり体内に
酸が蓄積した状態になります。実は、酸のほとんどはタンパク質が分解されて発生するものであり、
低蛋白食療法ではそれだけ酸の蓄積が軽減されます。体液の酸、アルカリの状態は、
皆さんが吸っている空気のようなものです。仕事場で、まわりをヘビースモーカーに囲まれた状況を想像してみてください。
息苦しくて仕事ははかどらないでしょう。これと同様、酸が蓄積すると、すべての臓器が機能低下します。
以上をまとめると、 低蛋白食療法の効果は
1) 尿毒素の産生を抑制し、残存腎機能への過剰負担を軽くする
2) P(リン)の蓄積を抑制する
3) K(カリウム)の蓄積を抑制する
4) 酸の産生を抑制する
などです。
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