何らかの原因で腎機能が低下した状態を慢性腎不全といいます。
低下した原因にもよりますが、進行速度の速い遅いの差はあっても、ほとんどの場合が進行性です。
腎臓の機能は体液環境(体液量や各電解質濃度、pHなど)を一定に保ち、造血ホルモンの産生やビタミンDを活性化することですが、腎不全状態が悪化して、
さらに30%を下回る状態にいたりますと、体内環境を一定に保つことが困難になります。
この結果、体液が過剰になれば浮腫として現れ、また、電解質の濃度異常が生ずれば口渇や脱力感が生じます。
その他、貧血や骨痛を含めた慢性腎不全の症状が出現します。
ここで重要なことは、単に腎不全の症状が現れるばかりでなく、こうした異常を是正しようとして、
残存している約3割の正常ろ過器が精一杯に働かざるをえないことです。
この結果、過剰負担となって、新たに正常ろ過器も障害されることになります。
たとえ話で言うと、10人の会社が3人に減ったら、仕事は3倍に増えるでしょう。
最初は元気いっぱいの3人でも、一人一人とやがてクタビレて過労死してしまう。
3人が2人になれば仕事量は5倍になり、ますます過酷な環境になります。最後は、働く人がいなくなって会社は倒産です。
つまり、腎機能が30%以下になると、悪い状態が、次の悪い状態の原因となり、次々とこの悪循環のため、
加速度的に腎不全が悪化することになります。このことは、腎機能が約1/3にまで低下すると、
いわば引き返せないところ(point of no return)を越えてしまって、その進行は避けようがないことを示しています。
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