実録・少額訴訟


第五回 起訴


2009年2月4日
 会社から最終的な再計算表が届いたらしいので、監督署へ貰いに行く。総額は4〜5万程度になっていた。最初に監督署に行った日から2年以上前の未払い分は払う気はないらしく、時効の分も支払うという話はなくなったらしい。当然4〜5万程度で納得できる訳はなく、この時点で訴えを起こす意思は確定的となる。


2009年2月5日
 訴えを起こすにあたって、請求する金額を明示する必要があるので、その額を自分で再計算しなければならない。そしてその額の大部分の計算は終わっているのだが、残業代の計算のみまだ終わっていない。というのも、残業代の計算方法がいまひとつわからないのだ。私の勤めていた会社は給料に○○手当という項目が多数あり、そのどれが残業代の計算に含まれるのかがわからなかったのだ(※11)。そのため、残業代の計算方法を直接会社の担当の人に聞こうとしたが、担当者不在とのことでこの日は聞くことができず。


2009年2月6日
 役員Sから直接電話がかかってくるが、「会社側は会社側の計算方法を行っているから、そっちはそっちで自分の正しいと思うやり方で計算すればいい」と言われ、残業代の計算方法は教えてくれない。仕方がないので自分で正しいと思う金額で計算すると、不足額は40万を軽く超えていた。


2009年2月10日〜12日
 裁判に必要な書類の準備をする
・訴状の作成(※12)
・登記簿謄本(法務局で1000円)
・証拠類のコピー(原告用、被告用、裁判所用の3部必要)


2009年2月12日
 訴状の作成がひと通り完成した頃に役員Sから電話があり、今になって「不足額が20万を超える」と言ってきた。不足分を大幅に認めてきたのか、それとも、前回の電話で弁護士に相談したことを話したから訴えられるのはまずいと思って増額してきたのか、それはわからない。しかしこちらの主張する額には到底足りないのは間違いなく、訴える意思はかわらない。必要な切手と収入印紙(※13)を購入後、訴状を提出しに行く。

 裁判所に提出すると、確認のため数十分待たされた。その後、訴状にいくつか誤字等があったので訂正して終了。ちなみに訴えの内容はこんな感じ↓

 未払い45万+付加金(※14)10万=55万払え
 55万に対する退職日翌日からの年14.6%の金員払え(※15)


2009年2月13日〜17日
 先日役員Sが言っていた不足分が(なぜか3回に分けて)約30万振込まれる。


2009年2月17日
 裁判所から郵便、裁判は3月24日に決定。


2009年2月18日
 監督署から会社が作成した給料の再計算表が届く。…うーむ、なにやら前の再計算表とほとんど変わってない気がする。それなのに残業代の部分だけが極端に増えているのはどういうことだ??適当な書類を作成しているのではないかと疑惑が生じる。

 とりあえず監督署にどういうことか聞いてみようと電話をしてみる。するとあっさり謎は解けた。そして怒りが増した。なにやら残業代の計算方法が法律に違反していたというのだ。そのことで監督署からの指導により訂正し、不足分を支払ったということらしい。つまり、こちらの要求に応えたわけではなく、更なる 未払いが発覚してその分を支払ったというだけのことなのだ。

 しかし今回のことで残業代の計算方法が明確化(※16)し、会社の計算方法は法的に間違っていたことがわかった。しかしここで1つ疑問が生じる。もう訴状を出してしまったわけだが、残業代を再計算すると請求額が変わってしま い、しかも少額訴訟の限度額である 60万円を超えてしまうのは簡単に予想がつく。
 どうすればいいのか良くわからなかったので裁判所へ相談へ。すると 裁判所で、訴えの変更申立というものができることを知る。 そして、今回の場合、請求額が限度額を超えてしまうが、一部の支払いがあったのでそれを差し引いて限度額内に収まったので特に問題はなかった。

変更後内容
 未払い55万+付加金25万-支払い済み30万=50万払え
 50万に対する退職日翌日からの年14.6%の金員払え

2009年2月23日
 訴えの変更申立へ


 













※11 後に解決。法律で定められている。











※12 私の行った簡易裁判所には訴状のひな型が置いてあった。書き方の説明も書いてあるので便利







※13 切手代は裁判所ごとに一定、収入印紙は10万円ごとに1000円 (例えば請求額が48万なら50万以内なので5000円)。
今回の私の場合
切手代:5300円
収入印紙代:6000円

※14 第114条 裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第6項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から2年以内にしなければならない。

※15 賃金の支払い確保等に関する法律 第6条1項
 事業主は、その事業を退職した労働者に係る賃金(退職手当を除く。以下この条において同じ。)の全部又は一部をその退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金にあつては、当該支払期日。以下この条において同じ。)までに支払わなかつた場合には、当該労働者に対し、当該退職の日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該退職の日の経過後まだ支払われていない賃金の額に年14.6パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。

※16 労働基準法37条4項 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。(つまりそれ以外は全て含まれるという解釈らしい)

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