自分が低蛋白食療法を意識したのは1996年のことです。取手協同病院の椎貝先生の教科書を読んだのが最初でした。医師になって12年目のことです。すでに腎専門医としていろんな腎障害に対して治療していましたが、腎不全治療における血圧、食事の影響については強く意識していませんでした。まず、低蛋白食療法のABCから学び、自分で始めてみましたが、その効果に驚きました。最初の変化は、血清Cr値が5-6の方のデータが顕著に改善したことです。尿素窒素(BUN)が上昇して、尿毒症症状が出現する頃ですが、低蛋白食療法に順応した方では、尿素窒素が著減し、自覚症状が改善しました。そして、腎機能低下の速度もほとんどゼロになったのです。
ここからは一本道でした。外来では腎不全の方全員に1日蓄尿を開始し、また、腎臓病教室を立ち上げました。この過程では、看護師さんや栄養士さんに随分手伝っていただきました。特に、栄養士さんの活躍には目覚しいものがありました。
第2のショックは、昭和大学藤が丘病院の出浦先生の腎教室に参加した体験です。医学生用の階段教室が満席となって、階段も臨時の座席となって人で埋まり、4時間の講義でした。患者さんは全国から集まっており、しわぶき一つ聞こえぬ真剣勝負です。出浦先生の熱意のこもった講義は強い使命感の表れでしょう。患者対医療の究極の形を見たおもいでした。一生懸命だから患者さんも応える・・・強い信頼関係です。
その後、平成14年6月に先生をお招きして腎臓病教室を開催したところ、300名弱の方が参加し、改めてこの治療法の潜在的なニーズに驚かされました。
この治療法の問題点があるとすれば、高度に専門的すぎる点でしょう。この点が糖尿病と決定的に異なっている点であり、一般臨床内科医のみならず、腎専門医にも受け入れられにくい理由だと思います。今後の方向とすれば、在宅での血圧や食事の情報を、医療のフィルターを通してこまめに患者さんへ還元する作業を、いかに効率的に行うか・・・でしょうか。
池田謙三 (MailTo:ikedaken@p1.tcnet.ne.jp) |
略歴: |
昭和59年 金沢大学卒業(同、第一内科に入局、腎グループに所属)
平成4年より厚生連高岡病院に勤務。
平成15年10月1日に、同市内にて泉が丘内科クリニックを開院。 |
資格: |
医学博士、内科認定医、同専門医、 腎専門医、同指導医、 透析認定医、同指導医 |
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