12345678

                     レッスン          

正しいコッキングによるレバー効果で飛ばすトップスイングの作り方

 ミケルソンのスイングは、いかにも柔らかい。タイガー・ウッズのように上半身を大きくターンさせるわけでもなければ、アーニー・エルスのようなボディーターンでもない。むしろ、いまではクラシックタイプと呼ばれそうな『タメを作ったレイトヒット打法』である。それでいて飛ばし屋でもある。この飛ばしのエネルギーはどこから生まれるのか。関節を柔らかくしておいてヒジ、手首のレバー効果でヘッドを加速させるのが、ミケルソン流だ。

 アドレスから気をつけておかなければならないことがある。

 〈ポイント1〉右腕(右打ちなら左腕)をだらりと下げて肩、ヒジの関節をリラックスさせる。

 〈ポイント2〉グリップは、できる限りソフトに握る

 〈ポイント3〉テークバックは右肩を支点に右腕(右打ちゴルファーはそれぞれ左肩、左腕)だけで始動する

 ここまでが、写真1である。では、肩のターンはどうすればいいのか。ここでカギになるのがコッキングだ。写真2のポジションからコッキングを加えていくと、肩が引っ張られ、小さなからだの動きでありながら捻りのきいたトップスイング(写真3)ができる。

 そこで、覚えなければならないのが、正しいコッキングの方法だ。どの方向に手首を折るのかを知らないとスライスやフックに悩まされることになる。

 「当たれば飛ぶけど、どこに飛んでいくかわからない」と言われている人は、このコッキングの方向を間違えていることが最大の原因になっている。

 正しい手首の折り方を知る方法がある。アドレスの姿勢からクラブを正面に上げてもらおう。シャフトが地面と水平になったところで止める。さあ、ここからシャフトでおでこの真ん中を叩くつもりで手首を折っていく。手のひら側でも甲側でもない。親指側に折る。これが、「手首をタテに折る」といわれる正しいコッキングの方向だ。左手をかぶせたストロンググリップにしている人でも、右手はスクエアにしておかないとおでこの真ん中には当たらない。

 手首を折る方向がわかったら、もう一度アドレスに戻ってテイクバックしてみよう。そして、シャフトが地面と水平になったところからコッキング開始。上半身が捻り上げられていく。これでミケルソン流のトップスイングできあがり。ヒジは無理に伸ばさない。トップスイングでも上半身はリラックスさせておかなければならない。次回は、このトップスイングからレバー効果を生かすダウンスイング以降のポイントを解き明かす

レッスン2
インパクト直前で左腕を止めると右腕が伸び、クラブヘッドは加速する
レフティーをあえて裏焼きにしてスイングの秘密を解剖

 ミケルソンのスイングの特徴は、華麗なニーアクションにあると思っている人が多いようだ。ところが、連続写真で分解してみると、イメージとは逆に下半身はもっぱら踏ん張るために使われていることがわかる。さらにわかりやすくするために、今回は、わざと裏焼きにした写真を使うことにした。サウスポーではなく、右打ちのミケルソンで見てもらおうという試みである。

 ダウンスイングからインパクト過ぎまで(写真4〜6)下半身の動きは最小限に抑えられている。こうしてダウンスイングからの3コマを見ると、だれかのスイングと似ているとは思わないだろうか。そう、青木功だ。

 青木のスイングの神髄は「腕を振り、止める」という動作でヘッドを走らせるところにある。腕を鋭く振るには、下半身を必要以上に動かさないことがポイントになる。そして、インパクト直前に、その腕の振りを止める。ミケルソンのスイングも意識としては写真6で終わっている。振ってきた腕を止めると、その先にあるクラブヘッドは、勝手に走っていく。例えは悪いが、これは、電車や車に乗っていて、急ブレーキをかけられると乗客が飛んでいってしまうのと同じ理屈で、物理では『運動量保存の法則』というようだ。実は、レバー効果とは、この法則をスイングに取り入れたものに他ならない。

 左腕を止めることで、右腕が伸ばされ、クラブヘッドがリリースされていく。振ってきた左腕を止めようとすれば、左脇が締まる。小手先の細工でできるものではない。グリップ部分だけでとめようとしたのでは左脇が開きクラブヘッドにまでブレーキがかかることになる。左脇を締め、左腕を止めることで右腕が左腕を追い越し、ローテーションが行われる。腕は止めてもクラブヘッドはなおも加速していく。そのヘッドの動きに右腕が引っ張られ、さらに引っ張られた右腕が右肩をターンさせてフィニッシュにおさまる(写真7、8)。ミケルソン流では、『フィニッシュは結果』である。

 左脇を締めて腕の振りを止める感覚を身につけるには、こんな練習をするといい。左脇にあらかじめタオルかヘッドカバーをはさんでおく。トップスイングは、これが落ちない程度のコンパクトなものでいい。そして、インパクトまでしっかりはさんだ状態をキープするのだ。これで、実際にボールを打つ。ボールを叩こうとする意識が先行すると、脇は開きやすい。クラブを止めるつもりでいると、逆にヘッドが走り、ボールは想像を超える勢いで飛び出していく。きっと、新鮮な驚きの世界が待っている。