第一話 崩壊した日常


 私、相対ミリオンはバイトを終え、家――借りているアパートへと帰ってきた。

 ――ちなみに、父と母は離婚しており、私の姓は母方のほうだ。

「……何これ?」

 私が借りているドアの前にダンボール箱があった。それもおっきい。

「……誰が送ったんだろ?」

 誰か送ってくるような者がいるか思い返してみた。

 ――回想中――。

 ――回想中――。

 ――回想中――。

 ――回想中――。

 ――回想中――。

 ――回想中――。

 ――回……止め止め。

 思い浮かばなかったので、素直にダンボール箱にはっつけてある伝票を見る。

 ――え〜とぉ……熱力学……。

「なんだ、父さんか」

 お父さん(戸籍上は元お父さん)、熱力学(ねつりきまなぶ)は、発明家というどういう収入があるのか良く分からない事をしている。

 ――ちなみにお母さん、相対理論(そうたいりろん)が、お父さんと別れた理由はお父さんがお母さんそっちのけとかだったわけじゃなく、どっちに入籍しても変な名前になるからという理由らしい
……私はそのままの方が変な名前だと思うんだけど……。まぁ、そういうことでお父さんとお母さんの二人は相思相愛といっても過言じゃない。私が独立してるのもその辺にあるんだけどね。

 とりあえず、そのままもなんなので、私はドアの鍵を開けようと――って、あれ?

「――鍵が開いてる?……どろぼう……?」

 私はできるかぎり音をたてずにドアを開け室内に侵入する――って、こういう言い方だと私の方が泥棒みたいだね。

がさがさ……

 な、なんか音がする……よ、よし!。

 私はいざと言うときのために持っていた催涙スプレーを取り出した。

 ――そのまま、音のするほうへ向かう……。

がさがさ……

 ……なんか人がうずくまってる……ファイト!&スマイル!スマイル!

「動くな!」

 私はできるかぎりの笑顔を浮かべ、一声叫ぶ。――相手はビクッ!と擬音が聞こえそうなくらいのリアクションをし、恐る恐る振り返り――固まった。

 ――あれ?この顔、この体格どこかで見たような……。

 ――回想中――。

 ――回想中――。

 ――回想中――。

 ――回……あ゛……。

「……おとうさん?」

「……やっと気づいたのか?まぁ、かってに入ったのは謝るが、その笑顔のつもりの表情、怖すぎだ」

「……はい?」


「……それで、突然どうしたの?」

 私は春になりかけてるというのにまだ置きっぱなしのコタツにあたりながら、同じくコタツにあたっているお父さんに問い掛けた。

「あぁ、実は届けものが無事届いたか不安になってな」

「あの表に置いてあるやつ?」

「あぁ、だが重量が60kgあるからな。一人じゃ中に運べなかったんだ」

「……そうなの……」

 運送屋さん、大変だったろーな……。

「とりあえず、表で開封して一個一個中に運ぼうと思うんだけど、手伝ってくれないか?」

「え?うん、いーよ」

 私とお父さんはコタツから出て、表に出て、ダンボール箱を開封する。

 ……中には変な色と形の金属板が入ってた。

「何これ?」

「ん?まぁ、とりあえず中に入れてからだ」

 私はとても(ごっつ)やな予感がした……それも外れないタイプの……。
でも、手伝っちゃたけど……。

「……それで、何なのこれ?」

「ふふふ……実は今、世界は危機に瀕している……ん?なんだ?」

 お父さんは私が手を突き出したのを見て、問い掛けてきた。

「……何、言ってんの?世界の危機なんてあるわけないでしょ、それに億が一あったとしてもど〜してお父さんがそれを知ってるの?」

「それが実際にあるんだ。今、地球は秘密結社キカイドーに狙われている。そして、聞いちゃいけない手段でそれを察知したんだよ私は」

「聞いちゃいけないってどんな手段なの?」

「……そこで私は対抗手段として、パワード・スーツ『フェミニオン』を製作したのだ」

 お父さんは、私の心の突っ込みになど気にせず続ける。って、もしかしてこの変な金属が?

「……それで、製作したのはいいのだが、理論じゃサイズがちょっとあわなくてなここに送ったんだ」

 って、お母さんに着せようとしたの?……きっとお母さん、二つ返事だったんだろうな………。

「ミリオン、お前が母さんの代わりにフェミニオンとなり、悪を倒すのだ!」

 熱血入った調子で叫ぶ父さん……って、私がなるんかい!

「嫌」

「……そう言わんと」

「嫌なものは嫌。大体いるかどうかも……」

キーッ!キィーン!

 ――突然、結構な音量でハウリング現象が起こる。

 み、耳が!……

「な、なに?……」

「………………」

 見れば、お父さんはお母さんにお小遣いをねだるとき並みの真顔だ。よっぽど何かあるんだろ〜な。

「あー!あー!只今マイクのテスト中。只今マイクのテスト中……あ、あ、何も知らぬ愚民どもぉ!我ら秘密結社キカイドーは今からこの地区を占領する!いかなる抵抗も無駄だぁ!いけっ!」

 騒音公害なくらいの音量で女性らしい声が聞こえた。

「……まじ?」

「まじだ。さぁ、ミリオン、パワード・スーツを」

「……でもこれどうやって着けんの?」

「お前のパーソナルデータは入力済みだ。あとはお前の声一つで着ける事ができる――ちなみに着ける時は『機甲展開』といえば着ける事ができる。はずす時は『電解』だ」

 至極当たり前な事を聞く私に対してもお父さんは表情一つ変えず答える。――結構ハイテクなんだ。

「そうなんだ……それじゃ……
きこぉてんか〜ぁい!


 ――秘密結社キカイドー幹部ニールは、周りで動いている三体のサイクロプス(一つ目巨人)を見ていた。

 サイクロプスはキカイドーの下級戦闘ロボットであるが、一般人や警察を相手にするには十分だった。――ニールはこの地区の占領を確信した。が――。

ちゅど〜ん!!

 突然、目の前にいたサイクロプスが爆発する。

「な、何だ?……!何者!?」

 ニールは、爆風の向こうに人影を確認した。

「……平和なご近所を占領しようなんて許せない!機甲電荷フェミニオン、参上!!」

 ババンッ!と言う効果音でも付きそうな登場をするミリオン――フェミニオン。

 ちなみに今の攻撃は単に自重60kg+武器など40kg+ミリオンの体重、計1○○(←ふせ字)kg分以上の推力(200kg)のコントロールに失敗しサイクロプスに突っ込んだ結果である。

「くっ!生意気な!行け!!サイクロプスA・C!」

 ニールの掛け声を聞き、雄叫び一つサイクロプスはフェミニオンに突進してくる。

「セェイクリッドォ・ソォ〜ドッ!」

 フェミニオンはそう叫ぶとおもむろに背中のあたりから巨大な剣を取り出す。

「な!?」

 そして、考え無しに突っ込んできたサイクロプスのうち、一体を腰のあたりで真っ二つにした。


 ――解説しよう!セイクリッド・ソードはミリオンの借りている部屋にある万能包丁よりも切れ味が鋭いのだ!なんと冷凍マグロなら頭から尻尾の先まで軽く一刀両断!


「く、くそ!サイクロプスC一旦体勢を立て直せ!相手の動きは素人だ!」

 幹部クラスともなると違うのか、一目でミリオンが素人であると見抜く。

「ぐぉぉぉ……」

 サイクロプスCはフェミニオンから距離をとり口から、謎の怪光線を発射する。

 光線だから光の速さのはずなのだが、それよりも圧倒的に遅い速度でフェミニオンへと向かう。

「なんの!クゥリスタルファ、バリアーー!!」

 突如フェミニオンの周囲にクリアーグリーンのバリアーが現れ怪光線をあらぬ方向へとはじき返す。

「目には目を!歯には歯を!フェミニィートォラァイフルゥ!」

 フェミニオンがそう叫びながら、おもむろに腰のあたりからライフルとは名ばかりの大砲が現れる。

「何処がライフルだ!」

「シュ〜トォッ!」

キュィィィィンチュバァァァァァァァァァァッ!

 ニールのツッコミを無視してフェミニオンはフェミニートライフルを発射する。

 サイクロプスCは塵と化す。フェミニートライフルから発射されたものはそのまま直進していきいくつかの家を破壊していった……。


 ――解説しよう!フェミニートライフルは言わば荷電粒子砲である(ラ○エルのやつと一緒)。その威力は絶大!雑魚相手に使うもんじゃない。


「あとはあなたね!」

 フェミニオンはフェミニートライフルを構えたままニールに向かって叫ぶ。

「くっ!フェミニオン、我らキカイドーの世界征服の一番の敵となる存在か!私の名はニール覚えておけ!」

 そう一声あげるとニールはダッシュで去っていった。

「千時万時有事解決!では!」

 フェミニオンは野次馬他(←警察とか)の目が気になりだしたので、そう叫ぶと同じように去っていった――。


「よくやったぞ、ミリオン」

「……もうやだぁ」

「そんなこと言わずにな?じゃ、あと頼んだぞ〜!今日は母さんと食事なんだ〜!」

 そう言いながら、学はダッシュで帰っていった。

「……カムバァック日常……」




次回予告!

 再びミリオンのご近所に現れるニール。

 学業のため、うかつに動けないミリオン。

 昼休みを使い秘密結社キカイドーの悪事をつぶせ!!

 次回機甲電荷フェミニオン

 「タイムリミット」

 好、ご期待!


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