イーグル、ラファール、セシリアの三人がかなり進んだところで、突如爆音が轟いてきた。

「何だ?」

 普通に喋るわけにはいかないので、小声で呟くラファール。

「とにかく行ってみましょう」

 イーグルも小声でそう呟き促すのだった……。



 三人はやや開けた場所に出た。100mほど先にはレージート軍の駐屯地が見える。

「……ラファールさん、あそこに転がってるのって……?」

「あぁ、魔道兵器だ……って、レージート軍、撤退してくみたいだ……」

「!……ラファールさん、あそこにいる男女って……」

 イーグルが指差した先には全身黒ずくめの男――サウラーと銀髪の女性――イリアが立っていた。

「ん? あ゛……」Σ(・・

「? どうしたの?二人とも」

「い、いえ、なんでもないです……ただ、少し前に見たことのある人たちなだけです」

「そ、そうだよ。とにかく、この先にある村にさっさと行っちゃおうよ」

「そうですね」

 イーグルとラファールは勝手に話を進めて、森の奥――情報屋によると、竜神族の村「レスポール」があるらしい――に向かって、歩き始めた。

 ――慌てて、ついていくセシリア。

 それを見つめる三人の気配に、気づいている様子はなかった……。




ファイティングヒーロー
THE FIGHTING HERO!


「……ビリー?」

 ハンスが呼びかけたときには既に遅く、ビリーは槍の長さを最長にし、飛び掛っていった。

 ――狙いは一番ひ弱そうな青年――少年といったほうがピンとくるが――にした。

「ハァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 振り向くイーグル、ラファール、セシリア。

 ビリーは、槍を一閃させる――確実に殺したはずだった。――が、

「いきなり何なんですか?危ないじゃないですか」

 殺したと思った少年――イーグルはビリーの槍を剣で受け止め、平然と問い掛ける。

「問答無用!」

「……竜神族の方々がそんなに喧嘩っ早い人達とは知りませんでした」

「そいつは故郷思いなだけだからな……ビリー、止めとけ」

 イーグルの言葉に弁解しながら、ハンスはビリーの右肩に手をおき、静止する。――少し後ろには納得がいっていない様子のクレアの姿も合った。

「……ハンス、なぜこいつらをかばう!」

「俺の勘ってヤツさ……なぁ? 話を聞くくらいなら良いだろう?」

「………分かった」

「それじゃ、話してくれないか?」

「えぇ」



「……まずは、この剣を見てください」

「? 何だ?その剣」

 イーグルはセシリア宅にあった剣――悪魔が狙っているものだが……を見せた。

「悪魔が狙ってるんですが、ここのとこ見てください、刃が二重になっていませんか?」

「? どこだ?……あぁ、ここか――で?」

「実はこの樹海の奥にスゴイ腕の鍛冶屋がいるときいたものですから、この表層部の刃を落として、真刃を出してもらおうと思ってここまで来たんです」

「……凄腕の鍛冶屋って……」

「おそらく、リグルーさんだな」

 顔を見合わせ、そう言いあうビリーとハンス。


 そこに声が投げかけられた。

「……警告しておく、その剣は人の扱うものではない」

 ――その声の主、サウラーに一同の視線が集まった。

「どういうことですか?」

「知るべきことではない」

「……そういう言い方、嫌いですね」

「好き嫌いの問題ではない……」

 イーグルの言葉にたいした答えを出さない。

「あなたは悪魔、ですか?」

「悪魔……リュナハルの一派か。いや、違う」

 簡潔に答えると、サウラーは立ち去って行く。

 ――が、歩みを止めた。

「…………………」

 無言のまま、太刀を抜き、ある一点に向け衝撃波を放つ。

 何も変化は無いように見えた。――だが。

「……よく俺の位置がわかったな」

 何もなかった空間がゆがみ、人の形をとる――但し上半身のボリュームが半端ではなく、色が黒かった――悪魔だ。

「……俺の名は黒喰(こくじき)――この名、貴様の魂に刻んでやるぜ!」

「貴様には警告する必要はないが、一応しておく。このまま去るならよし、それ以外の手段をとった場合――命の保証はできない」

 サウラーの警告に対して、黒喰は不機嫌そうに顔をゆがめた。

「……貴様ら創造されたものは滅びのときを享受する必要があるのだ! 滅びと生まれは同一だ!それをどうして理解せん!!」

「依頼人の意向だ。それでどうするんだ?」

「去る、という意見に対する答えは否だ! 我々は崇高な目的の元に動いている。貴様ら被創造物に頼っているものとは違うのだ!」

「そう、か」

 黒喰がそう答えると同時に、サウラーはさっきまで持っていた太刀とは違う漆黒の大太刀を取り出す。

「……! その太刀は……!」

 驚愕の表情を浮かべる黒喰。――サウラーのほうは表情一つ変えない。

「答える必要は、無い」

 サウラーの一撃は黒喰の右腕を肩から斬り離していた、黒喰の右肩からは闇が吹き出す。――サウラーは一撃で終わらせるつもりだったが、黒喰の回避がとりあえずは間に合った形となった。

「……はずしたか」

「! 『はずした』だと……貴様、何者だ!?」

「……答える必要は無い」

「ちっ!」

 サウラーがそう答え、攻撃に移ろうかという時になり、黒喰は闇に消えた。――それなりの致命傷に到っていたのだろう。



「……今、見聞したことは口外無用だ。それとその剣、今しばらく預けておく……封印は解くな。………イリア、急ぐぞ。」

 サウラーはそれだけ言い放つと、イリアと共に何処かへと去っていく。――残された者には現実の認識にしばらくかかりそうだった……。




「……! あいつ、レスポールの方向へ!」

 最初に我に返ったビリーは、一人その方向へ駆け出す。――それにつられて我に返ったハンスとクレアもビリーの後に続く。


「イーグル、どうする?」

「……乗りかかった船ですし、行くしかないんじゃないんですか?」

「ホント、因果な性分だね、ボクたち……」

「自覚しているだけ、マシじゃないの?」

 イーグル、ラファール、セシリアの三人もレスポールへと駆け出した……。




作者S反省。

 あぁ、オリキャラ大活躍……(いや、完全オリジナルじゃないけど)

 仕様が無いよ……サウラーだし、そいつが出る小説じゃ、こうなってるし……。

 それでは、次回もここにカァム・ヒアッ!(by鈴置洋孝さん)



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