――三十分後。
ウィルナへと向かう定期船、「ラドファージュ」が出向した。その甲板の上にはイーグル、ラファール、セシリアの三人の姿があった……。
――更に三十分たち、三人はウィルナへと上陸した……。
「……ぎもぢわるい゛」
セシリアは真っ青な顔色でふらふらしていた。
――船酔いだ。
「……吐かないで下さいよ……って、もう遅いですね」
イーグルが呆れつつ、そう言ったときには既に遅くセシリアは港のふちで海に顔を向けていた。
詳細は省くが、セシリアは吐いているのだ。
それを眺めているラファールは苦笑いを隠し切れない。――イーグルは港の入り口の方を眺めている。
――その目はある一点を見ていた。ラファールもセシリアの方を見ながらも、意識はイーグルの見ている場所と同じところに向けていた。
ファイティングヒーロー
THE FIGHTING HERO!
「ふぃ〜……すっきりしたぁ☆」
数分後、セシリアは妙にすっきりした顔で、イーグルとラファールの元に向かった。
「! あ、終ったんですか……じゃぁ、さっさと片しちゃいましょうか」
「そだね」
「? 何のこと?」
示し合わせたようなイーグルとラファールの台詞にキョトンとするセシリア。
「いや、お間抜けなヤツがボク達を待ってるようなんでね」
そう言い、ラファールは「そこにいるんだろ?」と言い、銃を発砲する。
――数瞬の後、周囲にいた者達がラファールが何をしたのか理解する前に一体の異形のものが地面から出現した。
「……俺に気づくとはさすが、と言うべきか……我が名はニコージア」
悪魔――ニコージアはそう言い、イーグルたちのほうへ近づく。
「……ふぅん」
ラファールはたいしておもしろくなさそうに鼻を鳴らし、再び銃を発砲する。
銃弾はニコージアの眉間に当たったが、ニコージアはとくに反応しなかった。
「………なるほど、私のような雑魚でも十分と言われた理由がわかったよ……ならば、任務を終らせないとならんな」
「へぇ、イーグル聞いたかい?やる気だよ」
「そうですね……港湾警備隊は当てにならないでしょうから、僕達でどうにかしないといけませんね」
イーグルはそう言い、ニコージアに向かってダッシュする。ラファールはイーグルの陰から銃を撃った。
――その更に後ろからはセシリアの援護準魔法が飛ぶ。
「ふ……笑止!………な……」
ドカッ!バキッ!グシャ!
「弱!」
「ぐ……覚えていろよ!」
ニコージアはありがちな捨てゼリフを残すと地面に沈んでいった。――三人の記憶からニコージアと言う存在が消えた。
「とりあえず今日はもう遅いですから、今日中に準備を整えて明日、ケエンの樹海へ行きましょう」
「そだね」
翌日、三人はケエンの樹海の前にたどりついていた。
「それじゃ、行こうか」
「はい」
「えぇ」
三人はケエンの樹海へと入っていった――が。
「あ、あれ、レージート兵じゃないですか?」
森の中に、紅い光がチラチラと見える。
「あ、ホントだ……でも、一般兵より強そうだよね」
「大丈夫……良い方法があるから」
小声で話し合う三人。
「なんですか?」
問い掛けるイーグルには答えず、セシリアは両掌を合わせる。
「……我に集いし精霊よ……………」
――瞬間、何も起こらなかった――少なくとも、イーグルとラファールにはそう感じられた。
「? 何も起きないじゃないか」
「そう思うでしょ?でも違うのよねぇ……少なくとも、敵に姿は見えないから……でも、音までは消せないから注意してよ」
「そ、そうなの?」
ラファールは恐る恐る、兵士の視線の先に立ち、手をヒラヒラさせる。
――反応はない。
三人は無言で、先に進んだ……。
三人がかなり進んだところで、突如爆音が轟いてきた。
「何だ?」
普通に喋るわけにはいかないので、小声で呟くラファール。
「とにかく行ってみましょう」
イーグルも小声でそう呟き促すのだった……。
三人はやや開けた場所に出た。100mほど先にはレージート軍の駐屯地が見える。
「……ラファールさん、あそこに転がってるのって……?」
「あぁ、魔道兵器だ……って、レージート軍、撤退してくみたいだ……」
作者S反省。
もう、突っ走るところまで突っ走ってやるぜぇ!