上級兵士を倒しても倒しても、数は減りはしなかった――いや、増えている。

「ぐ、どれだけの数がいるんだ!?」

 ――そのとき、突如、敵が最も多い地点が消滅した――。

「何だ!?」

 ハンスはあたりを見回し、上級兵士以外の人物が一人いることに気づいた。

「…………………………」




ファイティングヒーロー
THE FIGHTING HERO!


「…………………………」

 その男は無言で突っ立っている。その衣服は漆黒だった――既に上級兵士は眼中にないらしい。

 残った上級兵士はしばし、考えていたようだが、すぐに重点目標をその黒ずくめの人物へと変更したようだ。

「……お前達の仲間に警告はしたが?」

 男はそう言うと、太刀を抜き一薙ぎで上級兵士を斬り捨てる。

 接近戦は危険だと判断したのか、魔道砲を構える残りの上級兵士。だが、それも不意に現れたもう一人の人物によって防がれる。

 ――上級兵士の足元に光が現れた次の瞬間上級兵士たちは地面に沈んでいく。底なし沼のようだ。

 もう一人の人物は銀髪の女性であった。

 女性の魔法とおぼしきもので全滅する上級兵士。

 ハンスは殺気を解き、その二人の人物にある程度近づいた。

「……助かった、と言うべきかな?」

「何がだ?……」

 素で返す男。ハンスはチラッとビリーを見、再び視線を男に戻す。

「……一応警告しておく……邪魔をするならば、殺す」

 表情一つ変えずそう告げる男。――ハンスはかなり、ムカついてきた。

「どういうことだ!?」

「言葉そのままの意味だ……イリア行くぞ」

 ハンスの怒気のこもった問いかけを気にもせず、男は――女性――名はイリアらしいが――にそう言い、樹海の奥へと入っていく。

 ――イリアと呼ばれた女性はハンス達にペコリとお辞儀すると、小走りにあとを追いかけていった。

「何なんだ?本当に」

「……クレア、さっきの魔法みたいなのは何か知っているか?」

 ビリーは思い出したようにそうクレアに尋ねる。……遺伝子のいたずらか、魔人族と呼ばれる種族は魔法と世間一般で言われる物理現象を発生させる事ができる。

「………わからないわ……」

「ま、分からないことはしかたないだろ。とにかくここの樹海の奥にある、竜神族の村に行こうぜ」

 そう言い、首を振るクレアに、ハンスはそう言う。――更に先に向かう一行。




 あたりは静けさに包まれていた。――モンスター、小動物の気配がなくなったばかりか、嫌になるほどいた上級兵士の姿も見えない……屍はあったが……。

「さっきの連中だな」

「おそらくそうでしょうね……目的が気になるわね……」

「……もし、竜神族の村の壊滅が目的なら……死あるのみだ」

 ここの竜神族の村の出身のビリーの目は据わっていた。

 クレアは冷静に、――もしそうだとしても止めれないな――と思っていた。――口には出さなかったが……。




 少し先のやや開けたところで喧騒が聞こえてきた。

 不審に思い、足を止める三人。

 そこには先ほどの男女と――レージート軍の姿があった。―― 一個師団はあるだろうか……。

「あれは……トゥルバー!」

 レージート軍上層部はキャパシティーズと呼ばれる、集団が占めていた。――その戦略理論もさることながら個人個人の戦闘能力も並みの兵士よりも数段以上、上である。

 ハンス、クレア、ビリーの三人は何回かキャパシティーズと戦った事があったが、いずれもギリギリでの痛みわけである。

「! ビリー少し待て!!……レージート軍、殺気だってきたぞ」

「……まぁ、しばらく待ちましょう。あの男女が死んでも、それなりの損害が与えれるし……やつらを殺すのはその後でも十分できるわよ」

「……わかった」




 そうこうしている間に、レージート軍下級兵士、二個小隊(16名)が男女に近づいていく。

 ――だが、男の太刀から放たれた衝撃波によって、ある者は吹き飛ばされ、ある者は切り裂かれていた。

 レージート軍は物量戦で次々と兵を出したが、全て殺された。

「……マジかよ……どう見ても戦闘部隊の半数はやってるぞ……ビリー、どうした?」

「このままだと、部隊を撤退させるだろう、ヤツをやれなくなる」

「………ビリー、お前がここに出たら連中はここに竜神族の村があると感づくかもしれん。ここはこらえろ」

「分かってる。だが……」

「あ……魔道兵器よ!」

「そんなものまで持ち込んでいたのか!?」

 三人の視線の先には、全高7メートルほどの曲線を主体とした人型兵器が現れる。

 兵士たちは歓声を上げているようだ。ざわつくレージート軍。

「……魔道兵器には魔道兵器しかないからな」

「あぁ」

 魔道兵器は魔法を吸収するクーロスと呼ばれる金属を使っている。クーロス自体の強度は低いのだが、さらに表面に魔道防壁を張り、強度をあげており、いかなる攻撃も防いでいる。

 男は魔道兵器の頭部へとジャンプだけで到達する。――そして、生体部品の塊であるセンサー系統を太刀で斬る……魔道防壁を紙のように切り裂いて……。

 絶句する三人。――魔道兵器はバランスを崩し、転ぶ。男はさらにエンジン部分を破壊し、完全に行動不能に陥れる。

「…………」

 何かを話している男。――距離の関係で三人には聞き取れなかったが……。

「……どうなってんだ……?」




作者S反省。

 ごめん、メチャでクチャだ。

 ほとんど正体モロバレの男女、活躍させすぎた……。

 次回、ハンスチームとイーグルチーム合流(予定)



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