……あたりには不気味な静寂を漂わせていた。

 彼女の足元にあるのはかつて生きていたもの。自分と相手の力の差も見極められず、亜人狩りと称して返り討ちにあった者達だ。

 彼女――クレア・ラファイエットは亜人――正式には魔人族だが――と呼ばれ、魔法、と呼ばれる現象を発生させることができる種族だ。

 クレアは自らが手を下した周囲の骸に一瞥もくれずに立ち去る……が、不意に歩みを止めた。

「ハッ!」

 気合一閃、クレアの前に現れた不可視の壁によって、何かが弾き飛ばされる。

「……フフ……まだ死に残りがいたのね」




ファイティングヒーロー
THE FIGHTING HERO!


 そこに立っていたのは、上級兵士である。戦闘服の色は黒く、顔は隠され、目の部分は紅い光を放っていた。

「…………………………」

 クレアの言葉に無言で返す上級兵士。

「……我が命に答え、かの者を焼き尽くせ!フレアッ!」

 上級兵士の周りを炎が被う………が、一瞬で晴れた。

「なっ!?」

 その一瞬の隙を突き、上級兵士は左腕の魔道砲を発射した。

 ――そこで、クレアはこの世から生を消すはずだった。――が、代わりに暑苦しい声が聞こえてきた。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

「ハンス!」

 クレアの目の前に180センチほどの男がいた。両腕で魔道砲をガードしている。

「だ、大丈夫!? ハンス!」

「この程度ぉ気合で何とかなる!!」

 ハンスがそう答えたと同時に、上級兵士の背中が爆発する、魔道砲の機関が爆発したらしい。
――だが、上級兵士は慌てることなく、剣を抜き、斬りかかる。それを軽くかわすハンスとクレア。――同じ方向なのはご愛嬌である。

「くぉれでもぉくらえぇ!!」

 ハンスは、上級兵士の背中に一撃をお見舞いする。――前に倒れこみ、それきり動かなくなる上級兵士。

 まさに一撃必殺である。

 ――とたんに、緊張をほぐす二人。――が、ハンスは再び、緊張した

「ハァ〜ンスゥ♪久しぶりぃ〜〜」(^^

 今までの雰囲気とは別人と思えるほどのテンションで、ハンスに抱きつこうとするクレア。

「抱きつくな!」(−−

 何とかかわすハンス。

「ハンスは私のこと嫌いなの?」

「い、いや。そんなことはねえけどよ……って、ぐわっ!」

 答えに窮するところに不意を討ち、抱きつくクレア。ハンスは何かの技をかけられているような気分になった。

「……お前らいい加減にしとけ」(−−

 物陰から現れた男に振り向くクレア。

「あ、ビリー」

 それでも離れる事はやめないのであった。



「それでどうして、ハンスとビリーが一緒にいるの?」

 一息ついて、クレアはハンスとビリーに尋ねる。

「いや、たまたま近くでであってな。この近くまで来たら、ハンスが『誰かピンチなやつがいる』とか言ってここまで走ってきた、ってわけだ」

「やっぱり、私の王子様だよね♪」(^^

「いや、違うって言ってるだろ……」(−−

 いつものやり取りにビリーは苦笑いを隠し切れなかった……。



「それで、クレアはこれからどうするんだ?」

 言わずもしがなな事を尋ねるビリー。――もちろん答えはわかっているのだが……。
ちなみにハンスは現在放心状態だ。

「とりあえずハンスの行くとこ」

「ふ〜ん……」

 ビリーは意外に思った――『私もハンスについてく〜』と言う答えだと想像していたのだ。
ついていくのではなく、たまたまハンスの行くところが目的地とすると言うところに今回の進歩が見られるのだ。

「そうか……オレ達は今から、ウィルナに行って一度死の樹海へ向かおうとしている……ま、がんばれよ」

 そう言って、ビリーは片手でハンスを引っ張っていった。

「さぁて、がんばんなきゃね☆」






 ――三日後、ウィルナ。

 ウィルナは港町であり、流通業のマージンを主な収入とする自治小国である。流通を盛んにするため、関税などはもうけていない。

 ――ちなみに都市国家と自治小国であるが、規模はどっこいどっこいであり、国主が王族貴族か、民間人(主に商人)であるかの違いである。

 ハンス、ビリーは宿屋で、クレアと再開していた。

 ハンスはものすごい驚きようだったが、ビリーの説得により、同行を許可した。

 そして、一向はさっそく死の樹海を目指した――。

 ……途中、死の樹海にレージート保安部隊が向かったとの情報を耳にして――。



 ――死の樹海、正式名称をケエンの樹海というが、年々行方不明者が後を絶たず、今では死の樹海といった方が通用している。
――というより、正式名称自体が、記録に残っている初めて帰還した旅人――ケイン・バーシックと言う名からとっているのだが……。

「……入るぞ………」

 三人は、左右に分かれている道のうち、左の方へと向かう。

 日はまだ高いはずなのに樹海の中は薄暗い。

「! おい、あれ……」

 ビリーが指差した先に紅い光点が見え隠れしていた。

「こないだのあれか……」

「ばれると厄介だな………ハンス、クレア気配は殺していけよ」

「フン、俺を誰だと思ってるんだ?」

「わかってるわよ」

 樹海の中心地と思しき方向へと向かう三人。――気のせいか、上級兵士の数が増えてきている。

「ちっ!」

 思わず、舌打ちするハンス。――次の瞬間。

 ヂュシュゥゥゥゥン!!!

 ハンスのすぐ目の前の木が蒸発する。

「! ハンス!」

 わずかの怒気を込めながら勢いよく立ち上がるビリー。

「たぁく、わかってる!」

「ふぅ……」

 ハンスとクレアも戦闘体勢になる。

 ――三人の周りから紅い光が見えた――囲まれている。

「コイツはちょっとヤバイかもな?」

「俺は、最後まで諦めねえ!」

「私も、あの世で一緒になるよりこの世で一緒のほうがいい!!」

 三人は三方向へ走る。その一瞬の後、三人がいた場所の土が蒸発する。

「…………………………」

 上級兵士達は一言も発することなく、ある者は剣を、またある者は魔道砲を構え、攻撃態勢に入る。

「この前のようには行かないわ……クス……息とし生けるもののその全てに恐怖を!デッドダンス!」

 黒い霧が複数の上級兵士にかかる、それが晴れる事は無い……霧が晴れたそこには生命と呼ばれるものはもはや存在してはいない。

 周囲の上級兵士は仲間を気にする風もなく、波状攻撃を仕掛けてきていた――。


 ハンスは、とにかく目の前の敵を倒していた。


 ビリーはどこからともなく、短槍を取り出し斬りかかっていた――が、周囲の木がその動きを邪魔している。

「ちっ!……おっと!」

 ビリーは不用意に目の前に現れた敵を突き、背後の敵を柄で払った――。




 上級兵士を倒しても倒しても、数は減りはしなかった――いや、増えている。

「ぐ、どれだけの数がいるんだ!?」

 ――そのとき、突如、敵が最も多い地点が消滅した――。




作者S反省。

 クレアのギャグ面、某キャラクターになっちゃったよ……。

 そういや、記録2で中途半端なまま終わちゃったな。

 記録一の某キャラクター、完全オリジナルです(このサイトの某オリキャラ)

 とりあえず、現在資料が、試作版(ver0,15)しかないからな……。(いや、他にもあるけど)

 私は富野系作品の影響が濃いので、主人公は女難の相になっちゃうかもしれません(笑)

 でも、某小説みたく一般兵士に殺されて、主人公、最後死なないから。



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