★ 用語解説／カズ ★

なぜ、架空の日付を使うのか？

骨髄バンクを通じて、ドナー（骨髄提供者）と患者の「縁組み」が成立しても、お互いにどこのだれかは、知らされない仕組みになっています。

両者が対面することも禁止されています。従って、日時が分かる形でインターネット上に情報を流す事には問題があると思われます。

もっとも、この辺の指導は、主にドナーに対して行われているようです。

現に、私は「日時を口外しないように」と言われた記憶がありません。

さらに、患者とドナーの対面は、日本以外のほとんどの国で認められており、私も「条件付き賛成派」です。

とは言え、現状はこういうことなので、不本意ではありますが「架空の日付」を使用することにしました。

おかげで、日記には季節が分かる表現や話題が書けなくなってしまいました。

【おまけ】

今のところ、患者とドナーに許されているのは、「１回限り」、「匿名で」、手紙のやり取りをすることだけです。

　（２００１年１２月から、「移植後１年間の間に2回まで」と変更されました・・・・やっと？　それだけ？）

（ちょっとした）お礼の品を託すことも許可されていません。（可能なのは、せいぜい綺麗な便せんや絵ハガキを使うことくらいです）

しかも、その手紙は骨髄バンクがチェックを入れます。

身元が分かるような記述がないかを確認するのだと思いますが、海外のバンクとの落差を考えると悲しくなります。
　　　　　（問題箇所を修正し、代筆した手紙が届くこともあると聞きます）

患者さんの中には会いたくない人もいるでしょうし、ドナーが金品をせびるといったトラブルが絶対に起きないとも言えません。

ですから、「無条件に対面を許可すればよい」というものではないかもしれません。

しかし・・・　　　みなさんはどう思いますか？

体重指数

入院初日の体重を「ゼロ」とし、相対値を掲載します。

もちろん、本当の体重を隠すためです（笑）

あと、変動が分かりやすいという利点もあります（言い訳）

骨髄

早い話が、「骨髄」というのは血液を造る工場です。何処にあるかといいますと、骨の中にあります。
フライドチキンなどの骨を折ると、中に赤い部分があるのを御存知ですか？あれが骨髄(液)で、ゼリー状のドロリとしたものです。
ここに含まれている造血幹細胞から、赤血球をはじめとする血液の成分が造られています。
　　時々間違われるのですが、神経が通っている脊髄や骨そのものとは全く別の物です。
この辺りがガン化したものが白血病であり、働きが弱く十分に血液の成分を造ることが出来ないのが再生不良性貧血です。

骨髄には造血幹細胞が多く含まれており、何段階かの分化を経て赤血球、血小板、白血球などに成熟し、身体中へ送り出されます。
特に白血球には多くの種類があります。（大きく分けて「マルチ系（骨髄系）」と「リンパ球系」）
白血球は、免疫機能において重要な働きを担っています。　

骨髄移植

簡単に言うと、骨髄を入れ替えて血液の病気を治す治療法が骨髄移植です。健康な人（ドナー）の骨髄をもらうわけです。
骨髄移植の対象となる血液疾患はたくさんあります。以下は、ほんの一例です。
　　・白血病（慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病・・・・・）
　　・悪性リンパ種　
　　・再生不良性貧血
　　・先天性免疫不全症

なお、これらの病気になった患者さんが、全て移植対象となるわけではありません。抗ガン剤の効果が十分に期待できて治癒するケースもあります。
骨髄移植の成功率自体が決して高くないので、他の治療法と天秤に掛けて、より良い治療方法が選択されます。

移植当日は、ドナーから採取した骨髄液を、点滴で患者の体内へ入れます。作業自体は、メスを使うわけでもなく、非常に簡単です。
あえて言えば、臓器移植よりも輸血に近いでしょうか。
うまく行くと、数週間後には、ドナーからもらった骨髄液が患者の骨髄で活動を始め、血液を造るようになります。
手ごわいのは、むしろ移植後にやってくる合併症やＧＶＨＤです。

造血幹細胞（血液細胞）の分化

骨髄では、白血球や赤血球などになる、大もとの細胞である造血幹細胞がつくられています。
造血幹細胞は自らも分裂増殖しますが、徐々に働きの異なる細胞に変化していきます。（分化）

大もとの造血幹細胞は、あらゆる血液細胞になる可能性を持っています。
しかし、例えば赤血球になる方向へ分化が進んだ幹細胞は、赤血球にしかなりません。
このような分化には、サイトカインという物質が関与していることが知られています。

下図は、血液細胞の分化の様子を示したものです。
実際には、もっと細かな段階を経て分化が進みますし、良く分かっていない部分もあるそうです。
また、一口に「Ｔリンパ球」といっても、いろいろな種類があります。

一般的に言う骨髄移植とは、ドナーの造血幹細胞を患者に移植するのだと考えてもらって良いと思います。

　図が大き過ぎて、スクロールしないと全部見えない人ばっかりだろうな・・・

マルク

骨髄穿刺（せんし）のことですが、患者仲間では「マルク」のほうが通りがいいようです。ドイツ語で「骨髄」の意味です。
末梢血（普通の血管を流れている血液）ではなく、血液の製造工場である骨髄（骨の中）から採取します。普通は、胸骨または腰骨です。
まず、麻酔薬を注射し、次に皮膚を消毒します。その後、皮膚の上から骨に太めの針を（グリグリと）刺して注射器で吸い取ります。
この吸い取る際に、一瞬ですが強い痛みを伴います。

マルクが好きな人は、たぶんいないと思いますけれど、大切な検査です。例えば、末梢血が正常であるのに、骨髄には白血病細胞がギッシリ詰まっていることもあるそうです。血液の病気を正確に診断するには不可欠な検査です。

なお、皮膚がふさがれば（１～２日）入浴可能になりますが、２～３週間痛みが残る場合もあります。
医師の腕にも依存するらしく、「＊＊先生はマルクが上手い」などという会話が患者同士で交わされることもあります。
針を刺す時にグリグリやるのは、結構力がいるみたいです。

ＨＬＡ

おなじみの、Ａ／Ｂ／ＡＢ／Ｏ型というのは赤血球の型です。
ＨＬＡは一般には白血球の型と言われています。（厳密には、ＨＬＡは白血球細胞に特有のものではありませんが）

臓器移植の際の拒絶反応という言葉を聞いたことがあると思います。その人の免疫機能が働いて、自分とは違う組織を拒絶・破壊する作用です。
ＨＬＡ抗原とは、自分かどうかを識別する目印のようなものだと思って下さい。
　（免疫機能自体は、病原菌を排除したりする大切な機能ですね）

臓器移植を成功させる一つの鍵が、ＨＬＡの型を一致させることです。
ＨＬＡの型は、ほぼメンデルの法則(覚えてます？)に従って遺伝するので、兄弟間では１／４の確率で一致します。（親子間では２％程度）
ただ、厳密に遺伝子レベルで調べると、完全に一致するのは一卵性双生児の場合に限るようです。

私のように、血縁者内にＨＬＡが一致する人を見い出せなかった場合に、骨髄バンクに患者登録をしてＨＬＡ適合者を捜すことになります。

こんな考え方もできます。
仮に、あなたが骨髄バンクにドナー登録をしたとします。
　　すぐに、適合する患者さんが現れ、詳しい検査（３次検査）の呼び出しを受けた＝あなたが白血病等になった時にドナーが見つかる可能性が高い
　　３次検査の呼び出しが一向に無い(無いままに定年になる人もいます)＝あなたが白血病等になった時にドナーが見つかる可能性が低い

ＨＬＡの型さえ合っていれば、ＡＢＯ式血液型は違っていても骨髄移植に支障はありません。
移植後は、患者の血液型がドナーのそれに変わります。（私は一緒でした）
移植したら性格が変わったって話は聞かないな～（笑）

サイトカイン

人間の身体は、さまざまな細胞（免疫、造血、神経、ホルモン、などなど）が相互に調整を行いながら、正常に働くように出来ています。

サイトカインは、こうした機能調整に重要な役割を果たしているタンパク質です。

細胞の活動を促進したり、逆に抑制したり、複雑な調整が行われています。

互いに行き過ぎを防ぐことによって、生命活動が正常に行われるように働いているそうです。

その相互作用の絡み合った複雑さは、とても私には説明し切れません。（まだ十分に解明されているとは言えないようですし）

ただただ、その生命の営みの神秘・素晴らしさに感動します。

単純に「脳と免疫がつながっている」、「病は気から」といった議論は、子供だましのように感じます。（数年前にベストセラーになりましたね）

＜免疫に関心のある方へ＞　お薦め本：「免疫の意味論」　多田富雄著　青土社　　　

インターフェロン

インターフェロンは、サイトカイン（細胞間の相互調整作用を担っている物質）の一種で、分子量数万のタンパク質です。
例えば、風邪をひいたような場合にも増産されるそうで、もともと身体の中に存在する物質です（幾つかの種類があります）。
ウイルスの増殖を抑制したり、抗腫瘍効果があると考えられています。
遺伝子工学の発達によって人工的に大量生産することが可能になり、ガンの特効薬として、もてはやされた時期もあります。
今は、一部のガンやＣ型肝炎の薬として、よく使われているようです。

さて、簡単な説明にとどめますが（ホンマか？）、慢性骨髄性白血病（ＣＭＬ）は、遺伝子（ＤＮＡ）の異常によって、通常は存在しないタンパク質が生成されることが原因であることが分かっています。
この慢性骨髄性白血病に特有の遺伝子は、染色体レベルでは「フィラデルフィア染色体（Ｐｈ染色体）」として現れます。
まず、通常の抗ガン剤によって、このＰｈ染色体が消失することは期待できません。
ですから、幾つかの白血病が抗ガン剤で完治する可能性があるのに対し、ＣＭＬを完治させるためには、骨髄移植しか治療法がないと言われてきました。

ところが、インターフェロンを注射し続けることにより、このＰｈ染色体が消失する症例があることが分かってきました。
もっとも、完全に消失するのは、せいぜい３０～４０％の患者さんだけのようです。効果があった場合は、一生続けるのが一般的です。
しかし、インターフェロンによる治療は、治験レベルでも１０数年、保険適用になったのは５、６年前です。
２０年、３０年後も効果が持続するのかどうか証明されたわけではありません。（高齢になったら骨髄移植は無理ですし）

病院や医師によって異なると思いますが、ＣＭＬの最も一般的な治療方針は、以下の順だと思います。
（もちろん、病状や年齢によって変わります）
　　１．兄弟からの移植が可能な場合は、骨髄移植が最優先
　　２．インターフェロンの自己注射（毎日自分で注射する）
　　３．約１年後に、インターフェロンの効果が現れた場合は、注射を続ける（骨髄移植の成功率が低いですからね）
　　４．約１年続けても効果がない場合は、骨髄バンクに登録して骨髄移植を受ける（成功率が低くても仕方ない。最後の望み）
　　　　　（ドナーが見つかるまでの間もインターフェロンを続けるかどうかは、ケースバイケース）
私は、４番目ですね。
骨髄移植を受けるには、兄弟であれ、骨髄バンク経由であれ、ＨＬＡが一致したドナーが見つかる必要があります。

なお、２００１年１２月に、グリベックという新薬が認可され、ＣＭＬに関しては有望な選択肢が増えました。
（登場したばかりの新薬であり、長期的な効果・副作用などが確認されておらず、病院や医師によって対応に差があるかもしれません）

ちなみに、インターフェロンは高価な薬でして、私が毎日注射していた頃は、窓口負担（１割の頃）が８万円／月でした。
一生続けるとなると、骨髄移植に勝るとも劣らない高額の医療費が掛かることになります。

以下は、インターフェロン注射液に添付されていた資料の、ごく一部を抜粋したものです。
私が使った「スミフェロン（商品名）」が一般的ですが、「イントロン」を使う場合もあるようです。

ヒックマンカテーテル

心臓に近く太い「鎖骨下静脈」へのルートを確保するためのカテーテルです。
胸から挿入し、皮膚の下を通って肩の下あたりで静脈に挿入します。
挿入後は、２０～３０cmの管が胸からぶら下がっているような格好になります。（先は二股になっている）

骨髄移植を受ける患者は、様々な副作用のために、口内炎／吐き気／下痢などの消化器障害に見舞われます。
その結果、口から栄養を摂ることが困難になるため、高カロリー輸液を行う必要があるのです。
また、大量の薬剤の点滴や輸血、検査のための採血にも重要な役目を果たします。
日記中に「注射」と書いてあっても、注射針を刺すのではなく、このルートからの「注入」である場合が大部分です。
ちなみに、ドナーからもらった骨髄液もここを通じて入れるのです。

挿入手術には以下のようなリスクがあること、その際の対処について、事前に説明を受けました。（めったに起きないんでしょうけどね）
　　・肺を傷つける
　　・動脈を傷つける
　　・上手く挿入できない

入浴（シャワー）の際は、胸の挿入口からの感染を防止するために、大きなシールみたいの（正式名称は知りません）を貼り、カテーテルの先端の連結管にはビニール袋をかぶせてテープで固定しました。
使用していないときは、管の中身が固まらないように（血液ですからね）、薬剤を毎日注入します。（ヘパロック）
これは長い付き合いで、退院前日まで抜いてもらえませんでした。
なお、挿入口周辺は入浴時にも洗えなかった為、後日ものすごい量の「アカ」が出ました。（汚い話でごめんなさい）

こんな感じだったと思う・・・

白血病

白血病（Leukemia）にも、いろいろな種類があります。
それらを一緒にまとめて説明するのは、かなり無理があるのですが、おおざっぱな説明と言うことで理解して下さい。

俗に血液のガンと呼ばれる通り、白血球が腫瘍化した病気です。未熟な（正常な働きが出来ない）白血球がどんどん増殖します。
健康な人の白血球数は１万／マイクロリットル以下です。白血病患者の場合、これが数万～数十万に増えます。
しかも、まともな働きをしません。
ちなみに、私の場合、比較的早期に発見し治療を開始したので、ＭＡＸ４万台でした。
この結果、正常な白血球や赤血球、血小板の生産が阻害されます。

【白血病でなぜ死ぬのか】

１．白血球が異常に増加すると、血液中に溶けきれなくなります。その結果、血液が流れにくくなります。
　　いわゆる梗塞(コウソク)です。
　　脳に起きれば脳梗塞。心臓に起きれば心筋梗塞。その他いろいろですが、いずれも致命傷となります。

２．血小板の減少
　　ＤＩＣなどの色々な作用がありますが、ここでは単純に考えます。
　　血小板が減ると血が止まらなくなります。
　　軽い症状としては、あざが出来やすい、鼻血が止まりにくい、歯ぐきから出血する。
　　重症になると、臓器から出血します。脳内出血、消化器からの出血 etc.
　　これらは止血が困難であり、死に直結します。
　　　　　　（血小板数の検査基準値：１５万～４０万／マイクロリットル）

３．正常な白血球の減少
　　白血球は病原体（細菌、カビ、ウイルス）と戦う迎撃部隊です。
　　この働きが正常に行われないと、肺炎、膀胱炎、髄膜炎 etc.を引き起こします。
　　これらは、白血病による死因の多くを占めています。
　　極端なケースでは、普通の人には害のない（かゆいけど）水虫菌が肺炎を起こしたりすることもあるそうです。
　　　　　　（白血球数の検査標準値：３５００～９０００／マイクロリットル）

４．赤血球（ヘモグロビン）の減少
　　私の認識では、これが直接の死因につながるケースは少ないように思います。
　　ただ、重い貧血になりますので、疲れやすい、動悸息切れといった症状が出ます。
　　　　　　（ヘモグロビン数の検査標準値：１２～１８ｇ／ｄｌ）

【慢性骨髄性白血病（ＣＭＬ）】

いろいろな白血病がある中で、私がかかったＣＭＬについて、特別扱いで（笑）簡単に説明します。

「慢性」という名が示すように、ある程度進行しないと自覚症状は現れません。　
健康診断などで血液検査を受け、偶然発見されることが多いようです。（私は風邪をひいて血液検査をしました）

好中球を中心とする骨髄系の白血球が増えていることが特徴です。
　　　　　（リンパ球が増えているリンパ性白血病と区別できます）
白血球は何段階かの分裂過程を経て、完成された白血球に成熟しますが、その各段階の白血球が見られます。
　　　　　（急性白血病の場合は、芽球という未熟な細胞が多くを占めています）

インターフェロンの項で説明してあるように、ほとんどの患者さんに「フィラデルフィア染色体（Ｐｈ染色体）」が見られます。
これは、ＣＭＬの診断を下す重要な決め手となります。
少し詳しい話をすると、Ｐｈ染色体は「９番染色体の長腕」と「２２番染色体の長腕」の一部が入れ替わった（転座）ものです。
この結果、誤った遺伝子情報が伝えられ、健康な人には見られないタンパク質（Ｐ２１０）が作られてしまいます。
このタンパク質が、病気の原因となっていると考えられています。
ＣＭＬ以外の白血病においても、ガン遺伝子が特定されているものがあります。

症状としては、脾臓の腫れ／微熱／寝汗／倦怠感などが見られますが、これだけで命を落とすほどではありません。
抗ガン剤やインターフェロンで、ある程度のコントロールが可能です。（この時期を「慢性期」と言います）

ところが、診断を受けてから４～５年後に、コントロールが難しくなる移行期を経て、急激な病状悪化が訪れます。
これを急性転化と言い、急性白血病に似た病態を示します。
急性白血病の場合は抗ガン剤が効果を示すのですが、急性転化を起こしたＣＭＬの場合は薬が効きにくく、数ヶ月で死に至るケースが少なくないそうです。
骨髄移植も、急性転化後では成功率が低くなってしまいます。
　（急性転化後であっても、治療によって第２慢性期に入り、骨髄移植を受けて快復している患者さんもいます）
どの時期に、どの治療法を選択するかは、骨髄移植による死亡リスク、インターフェロンの効き具合、患者の年齢、ドナーが存在するか（家族か他人か）、などを総合的に判断して決めることになりますが、非常に難しい問題です。
（２００１年１２月に、グリベックという新薬が認可され、ＣＭＬに関しては状況が変わりつつあります）

前処置

骨髄を移植する前に、患者自身の骨髄（白血病細胞も含む）を完全に破壊する必要があります。その目的を大きく分けると。
　１．患者の血液細胞（リンパ球等）が残っていると、ドナーからもらった骨髄に対して拒絶反応が起きます。
　　　その結果、移植した骨髄が排除されてしまい、移植は失敗に終わります。
　２．当たり前の話ですが、白血病細胞を根絶しておかないと、再発の大きな原因になります。

移植の約１週間前から、患者に対して超大量の放射線照射（ＴＢＩ：total body irradiation）と抗ガン剤投与を行います。
　（症状等によっては、抗ガン剤投与のみで、ＴＢＩを行わない場合もあります）
通常のガン治療の場合、ガン細胞は殺し、正常な細胞にはなるべくダメージを与えない程度に、放射線や抗ガン剤の量を加減します。
しかし、骨髄移植の前処置では、患者の血液細胞を完全にゼロにする事を目標に行います。（入れ替えることが目的ですから）
これによる副作用も、大変辛いものです。

近年、上記の目的のうち、「２」はあまり重要でないことが分かってきました。
前処置だけによる白血病細胞根絶には限界があること、ＧＶＬ効果が大きな役割を果たしていることが明らかになってきたのです。
ここから、前処置を弱めに抑えたミニ移植（ミニトランスプラント：骨髄非破壊的移植）という考え方が出てきました。
ミニ移植については、まだ研究段階の治療法であり、病院によって方法も違います。
詳しく知りたい方は、ネット上や実施病院で最新の情報を入手してください。

富山県立中央病院の放射線照射室（リニアック）／写真提供：リンダさん
　

　
赤い三角みたいな線の中に身体が入らないといけない。　

無菌室など

骨髄移植を受ける患者は、前処置によって、自分では血液を造ることが出来なくなります。
すなわち、白血球などが無くなってしまうわけです。
この状態は、ドナーからもらった骨髄が活動を始めるまで続きます。
ある程度正常になるまで数ヶ月はかかるでしょう。
確率は低いですが、ドナーの骨髄が生着（活動）しないケースもあります．．．

当然、その間の感染予防対策が重要になります。
いわゆるクリーンルームに１ヶ月近く閉じ込められ、家族との面会も制限されます。（私が入院した病院では、原則として１日１回１名だけ）
食事は無菌食です。間食として許されるのは、缶入りの果物、ゼリー、お茶などに限ります。看護婦さんに１０分間消毒液に浸けてもらい、ピンセットで受け取り、滅菌水で洗ってから開けて食べます。
なお、ジュースは、アップルやピーチ系が嬉しいです。オレンジやグレープフルーツ系は、口内炎がひどいと痛くて飲めません。
この他にも、なにかと精神的・肉体的に不自由と苦痛を強いられます。（閉所恐怖症の人は大変ですね）
まあ、それをどう乗り切るかは、患者さん次第ではありますが・・・・

【米国の状況】

一部のケースを除いて、無菌室を使わないようになって来ているそうです。これは衝撃的な事ですね。
本当に無菌室が不要なのであれば、現在の日本の治療は、幾つもの問題を抱えたまま走り続けていることになります。
　　・多大な経済的ムダ（患者はもちろん、健保＝日本国にとっても）
　　・無菌室の空きがないために移植できない患者さんがおられる（順番待ち＝場合によっては手遅れ・命取り）
　　・移植患者に精神的な負担をかけている
しかし、たとえ５％（私の勝手な想像です）であっても、無菌室を使った方法の成功率が高いのなら、そちらを選びたくなるのが人情と言うものです。
また、私の素人考えですけれども、「高温多湿の日本で、米国流がそのまま通用するのか？」「無菌室をなくすことによって一般病棟の管理見直しが必要ではないか？」といった疑問もあります。
なお、日本においても、無菌室の管理基準を引き下げる方向に向かっているようです。（まだ病院の設備や方針によって差がある）
（私が移植した富山県立中央病院における最近の無菌室管理l）

米国の骨髄移植事情については、「リンク」にある「ＫＥＮの超闘病法」のページに詳しく紹介されていますので、興味のある方は訪問してみて下さい。

Ｇ－ＣＳＦ（granulocyte colony stimulating factor）

顆粒球コロニー刺激因子のことで、サイトカインの一種です。

白血球（特に好中球）の増殖を促進する造血因子です。

遺伝子工学の発達によって人工的に大量生産することが可能になり、広い用途で使用されています。

白血病に関して言えば、骨髄移植後や化学療法後に、好中球の回復を促す目的で投与されます。

感染症の防止や無菌室滞在日数の短縮が狙いですね。

ただし、骨髄性白血病では、白血病細胞の増殖を促進する効果もあり、使用に慎重になる場合があります。

Ｇ－ＣＳＦの商品としては幾つかあるらしいですが（よく知らない）、白血病の場合は「グラン」が一番ポピュラーのようです。

個人的感想としては、この薬は非常に良く効きます。

ＧＶＨＤとＧＶＬ

ＨＬＡの型が完全に一致することは希なので、免疫反応は避けて通れません。
ドナーからもらった骨髄に由来する白血球（リンパ球）が患者の身体を攻撃する病気をＧＶＨＤと呼びます。
もう少し詳しいことを知りたい方は、以下の説明を読んでみて下さい。

【免疫の初歩の初歩】
ここで免疫反応の解説をするのが目的ではありませんし、私ごとき素人には無理な相談です。
そこで、免疫反応の仕組みを極めて単純に説明します。
　　１．体内に細菌などの異物が侵入したら、抗原提示細胞がＴリンパ球に対してシグナルを送ります。
　　２．次に、Ｔリンパ球が、Ｂリンパ球に対して抗体をつくるように指令します。
　　３．Ｂリンパ球が作った抗体が細菌などと結合し、無力化、分解します。
ウイルスが侵入してきた場合は、これとは違った仕組みが働きます。
また、Ｔリンパ球にも種類があり、非常に複雑な作用をしていますし、いまだに解明されていない部分も多いそうです。
したがって、これ以上立ち入って皆さんに免疫について説明するには、私は明らかに能力不足です。

ここでは、免疫作用においてＴリンパ球が重要な働きを占めているということだけを理解して下さい。
このＴリンパ球も、骨髄に由来します。（正確には、胸腺という臓器も重要な役割を担っています）

【通常の臓器移植の場合】
患者自身のＴリンパ球が、ドナーからもらった臓器（肝臓移植なら肝臓）を異物（自分ではない）とみなして攻撃します。
この免疫反応を抑さえるために、免疫抑制剤が使われます。

【骨髄移植の場合】
ドナー由来のＴリンパ球が、患者の全身を異物とみなして攻撃します。
肝臓、消化器系、目、皮膚、など色々な部分に障害が現れてきます。
これを「ＧＶＨＤ（Graft-Versus-Host-Disease）：移植片対宿主病｣と呼びます。
骨髄移植患者の１５～２０％がＧＶＨＤによって死亡するそうです。
この場合も、免疫抑制剤を使って障害を抑えます。

ところが、白血病の場合は少し面倒な問題があります。免疫反応を抑制し過ぎると、再発の可能性が高くなるのです。
白血病細胞を完全にゼロにする事を目標として、移植の前処置を行うのですけれど、わずかに残ってしまう場合があります。
理論的には、たった１個の白血病細胞が３０回分裂すれば立派な再発です。（２の３０乗＝１０億個・・・まあ、そんなに単純ではないが）
残った白血病細胞は、元々患者のものですから、ドナー由来のＴリンパ球はこれを異物とみなして攻撃してくれます。
これを「ＧＶＬ（Graft-Versus-Leukemia）：移植片対白血病」反応と呼びます。
適度なＧＶＨＤ(ＧＶＬ)を起こすほうが、長い目で見て生存率が高くなるわけです。
そのさじ加減が難しく、現代医学では、まだ手探り状態というのが現状です。
このＧＶＨＤは、社会復帰後も長期間に渡って患者を苦しめます。

ちなみに、腫瘍系の病気ではない「再生不良性貧血（骨髄の働きが弱い）」等の患者さんが骨髄移植を受けた場合、ＧＶＬは関係ありません。
したがって、再発を気にせずに免疫抑制剤を使用することが出来ます（免疫抑制剤自体の副作用には注意が必要）

【急性ＧＶＨＤ】
一般に、骨髄移植から１００日目くらいまでに発症するものを、急性ＧＶＨＤと呼ぶようです。
移植されたドナーの骨髄液中には、多くのＴリンパ球が含まれています。
これが、患者の身体を攻撃するわけです。

【慢性ＧＶＨＤ】
骨髄移植から１００日目以降に発症するものを、慢性ＧＶＨＤと呼ぶようです。

質問（教えて下さい）・・・・なんじゃそりゃ？
実を言うと、私は「慢性ＧＶＨＤ」のメカニズムが良く分からないのです。

血液の成分には寿命がありますので、１００日目にもなれば、移植された骨髄液に含まれていたＴリンパ球は無くなっています。
新たに、患者の体内で作られたＴリンパ球が活動をしているはずです。
ちなみに、Ｔリンパ球の「Ｔ」は「Ｔｈｙｍｕｓ＝胸腺」の意味です。
骨髄で作られたリンパ球のもとになる細胞は、胸腺において教育（選別）されて、Ｔリンパ球として外へ出ていくのです。
選ばれる基準は、「自己を攻撃しない」＆「非自己を攻撃する」であり、それに合格するのは全体の数％だそうです。
さて、骨髄移植を受けた患者は、胸腺の移植をしたわけではありません。自分の胸腺から出てきたＴ細胞が身体を巡っているはずです。
なのに、なぜＧＶＨＤが起きるのでしょう？

私なりに本を読んだり、インターネットを巡ったりして調べてみたのですが、どうも良く分かりません。
まあ、田舎に住んでいるので、大きな書店もありませんし、高価な医学専門書にあたってみたわけでもありません。
一応、「あやしいな」と、にらんでいるのは

　　　１．移植治療によって胸腺もダメージを受けており、正常に機能していない。
　　　　　その結果、自己免疫疾患のような状態になっているのかも？
　　　２．いわゆる、胸腺外分化によって生まれたＴ細胞が悪さをしている？

って処なんですが、全然自信は無いです。
どなたか詳しい方、私にも分かるように御教授願えませんか。よろしくお願いします。

ついでに、もう一つ質問　（＾＾）／
慢性ＧＶＨＤは治るのか？
先輩の患者さん達を見ていると、徐々にではありますが、症状が軽くなっていく例が多いように感じます。（数年かけて）
治るとしたら、なぜ治るのか？　教えて下さいませ（笑）
「免疫寛容が成立するから」という話も聞きますが、免疫寛容の機序について素人向けの説明が聞きたいな～

【おまけ】
最近、通常の輸血でもＧＶＨＤが発症することが分かってきました。最悪の場合は死に至るケースもあり、問題となっています。
リンパ球を輸血しないように、あらかじめ破壊処理をしたり、成分輸血を行うなどの対策が考えられているそうです。

ＤＬＴ（ドナーリンパ球輸注）

白血病の再発時などに行います。

簡単に言うと、ドナーのリンパ球を輸血してＧＶＬ効果を誘導するのです。

白血病細胞を叩く事を期待できますが、ＧＶＨＤや汎血球減少といった副作用が致命傷となる可能性もあります。

慢性骨髄性白血病の場合は、比較的効果が高いという報告があります。

ドナーが血縁者の場合、ＤＬＴの必要があれば比較的容易に実施可能です。

しかし、骨髄バンクからの移植の場合は、ドナーの方にリンパ球を提供してもらうのは色々と障害があり、なかなか難しいようです。
（もちろん、実施例は幾つもあります）

サイトメガロウイルス（ＣＭＶ）

サイトメガロウイルス（ＣＭＶ）は非常に弱いウイルスで、健康な人が感染しても何の害もありません。
ところが、免疫機能が低下した患者（移植患者やエイズ患者など）の場合は、重い肺炎を引き起こすことがあります。
いったん肺炎を起こしたら、その致死率は８０％以上と言われています。

実は、成人の９０％以上がＣＭＶに感染しているのです（白血球の中に潜んでいるそうな）。
つまり、骨髄移植によって免疫力が低下した患者は、ＣＭＶ再活性化による感染に細心の注意をはらう必要があるのです。

予防処置として、抗ウイルス薬であるデノシン（ガンシクロヴィル）や免疫グロブリン製剤を使用します。
ただ、デノシンには「骨髄抑制」という副作用があります。
そのため、移植後ようやく活動を始めた骨髄の機能に悪影響を与え、最悪の場合には移植が失敗に終わる危険性もあります。
投与と並行して血液検査をし、必要があれば中止や減量、継続する場合もグラン（Ｇ－ＣＳＦ：白血球を増やす働きを持つ薬）や血小板輸血を併用するなど、慎重に治療を進めます。

移植患者がＣＭＶ陰性（感染していない）場合は、ＣＭＶ陰性のドナーを捜せば、リスクを抑えることができます。
しかし、ＨＬＡが一致するドナーを探すこと自体が大変なのですから、その上ＣＭＶ陰性のドナーが見つかるのは、よほど幸運なケースでしょう。
もちろん、この場合は治療中に輸血する血液もＣＭＶ陰性でなくては意味がありません。実際には、白血球除去フィルターを用いたり、最近では献血システムの改善によって、含まれる白血球が少なくなるような工夫がされているそうです。

骨髄移植の合併症として起きる肺炎には、ＣＭＶの他に以下のようなものがあります。
　・カリニ肺炎／予防薬としてバクターが使われます。
　・アデノウイルスによる肺炎／このウイルスは、出血性膀胱炎を引き起こすこともあります。
　・ヘルペスウイルスによる肺炎　
　・その他

ヘルペス（帯状疱疹）

水痘・帯状疱疹ウイルス（ヘルペスウイルス）が原因となって発症します。
子供の頃に水疱瘡にかかったり、水痘ワクチンを接種した人は、このウイルスを体内に潜伏させています。
通常は、これが悪さをすることは無いのですが、過労やストレスが溜まったり、免疫力が低下した場合に暴れ出します。
ほとんどの人がヘルペスウイルスを持っていますから、骨髄移植によって免疫力が低下した患者さんの多くが発病します。
退院後に発症する患者さんも多いのですが、私は入院中に済ますことができてラッキーでした。（再入院は面倒ですからね）

身体の左右の片側の神経に沿って、ピリピリとした痛みを伴う水疱ができます。私は、右のお腹から背中にかけて出てきました。
患者さんによっては、頭部／胸／足／あそこ（？）など色々な部位に現れます。
きちんと治療をしないと、神経痛様の後遺症が残る場合もあるそうです。
治療は、ゾビラックスの点滴を行えば（３回／日を１～２週間）、ほとんどの場合に効果が現れるようです。

四谷怪談の「お岩さん」の顔は、ヘルペスだったという説もあります（ホントか？）
そう言えば、皇后様もヘルペスで入院されましたね。

　【1998/9/19追記】
　　「ラッキー」と思っていたのですが、移植から約２年後に、２度目のヘルペスで再入院する羽目に陥りました。
　　全然ラッキーじゃなかったわけで・・・２度もヘルペスにかかるなんて（涙）
　　ちなみに、２度目は左のお腹から背中にかけて出てきました。
　　皮膚表面に症状が現れる１週間位前から、お腹が痛いという前兆がありました。

努力の結果、水泡を潰さずに済んだのに、こんな痕が残りました。

気分が悪くなった人、ごめんなさい。

ＶＯＤ（肝中心静脈閉塞症）

これに関して、私は詳しいことを知りません。（なら、書くなっちゅうに！）
一応、知っていることを書いておきます。（違ってたらごめんなさい）

肝臓は、肝小葉という１～２mmの大きさの組織が集まってできています。
この中心を流れる静脈や、それらが集まって太くなった肝静脈が非血栓性の閉塞を起こす病気だそうです。
まあ、早い話が、肝臓の中の血管が詰まっちゃうってことでしょう。
細い中心静脈は、消失してしまうこともあるらしいです。

黄疸や体重増加が見られ、最終的には肝不全で死亡します。
骨髄移植に伴うＶＯＤは、前処置の際に使われる薬剤や放射線照射、さらに移植後に使用する薬剤が原因となります。

予防薬として、ヘパリンが使用されることが多いようです。

免疫力低下と移植後の生活

骨髄移植後の患者は、免疫力が極めて低下／混乱しています。免疫抑制剤の服用がそれに輪をかけます。また、過去の免疫的記憶もリセット状態になっています。その結果　・簡単に風邪やインフルエンザに感染し、症状も重い。　・普通は子供の頃に１度かかると２度とかからない「おたふく風邪」や「はしか」などに、　　もう一度かかる可能性がある。といった問題を抱えながら社会生活を送る必要があるのです。人混みを避け、マスクをして外出する患者さんが多いようです。しかし、同僚が風邪をひくのに合わせて、その都度自分も会社を休むわけにはいきません。マスクだって、ウイルスには効果が無く、気休めに過ぎないようです。（最近、ウイルス除去率９９％とうたったマスクが販売されていますけど、どの程度の効果があるんでしょうか？）免疫力が正常に回復するまでには数年かかるといわれています。一般論としては、２０代前半以下の若い人は早いようです。もちろん、個人差がありますので一概には言えません。（まあ、人体実験をするわけにいかないので、経験的な年数ですが・・・）

「慢性ＧＶＨＤ」にも苦しめられます。これが原因で再入院というケースも珍しくありません。　