レポートNO1「介護保険法スタート時点での間違い」

 1995年7月上旬、私は舞浜で開催中の全国在宅介護支援センター協議会主催の職員研修会に出席していました。
 二日目、厚生省の担当官の現状報告があり、昨日遅くまで会議が行われていた最新情報の報告が行われました。

 「ケアマネジメントを誰が実施するのか。現在、医療・福祉関係者で綱引きが行われている。在宅介護支援センターは、ケアマネジメント機関として制度化されており、最も適切な機関だが、歴史が浅く、全てお任せするには問題も多い。」
 介護保険がスタートする4年9ヶ月前の事です。問題は、担当者の経験が浅く、ケアマネジメント技術が伴わない事です。

一市民として社会に公開された情報からの判断

 2000年4月、介護保険はスタートしました。介護認定訪問調査によってコンピューター入力資料を作り、コンピューターによる一次審査と、介護認定審査会(医療・保健・福祉関係者)による二次審査の二段階審査に落ち着きました。その他に、医師の意見書を参考にする事になっています。
 ケアマネジメント機関としての在宅介護支援センターは、当然の事として、行政から、訪問調査・ケアマネジメントの委託を受けることになります。
 従来、在宅介護支援センター(管理者の他、ソーシャルワーカー又は保健婦と看護婦又は介護福祉士の2名)には、年間一千数百万円の委託費が支払われていました。介護保険法では、ケアプラン作成報酬が支払われる事になっている為、その委託費は約半額になりました。
 この部分が大きな間違いでした。

 「在宅介護支援センター」は地域活動を内包したケアマネジメント機関です。ケアプランを作る事が本来の目的ではなかったはずです。
 地域との連携を保つ為の重要な使命を持っていました。
 「支援センター協議会を組織して、地域代表と共に地域の問題を考えて行く」地域の医療・保健・福祉情報の源として、関係者に情報提供する立場の予定でした。
 この間違いの為に、多くの優秀なソーシャルワーカーが失望してしまいました。

2002・3・13 公正取引委員会の調査結果が発表されました。

 介護保険適用サービス分野における競争状況に関する調査について―居宅サービスを中心に―

 ホームページに次のように記載いたしました。

 「在宅介護支援センター業務を受諾している事業者にその理由を聞いたところ、利用者獲得につながるとする回答が6割以上を占めており、在宅介護支援センター業務を受諾することが利用者を獲得する上で重要となっていることがうかがえる。」
 調査の対象事業は「訪問介護」「訪問入浴介護」「訪問看護」「通所介護」「短期入所生活介護」「福祉用具貸与」の6サービスで、中でも、訪問調査や在宅介護支援センター事業が社会福祉法人等を中心に受託されているため、顧客獲得において民間企業が苦戦している

点の指摘が目を引きました。

 以上から、ケアマネジメント機関としての在宅介護支援センターが、サービスの囲い込み機関に傾いている事は否めません。
 ケアマネジメントリーダー事業が功を奏することを、期待しています。

 『訪問調査や在宅介護支援センター事業が社会福祉法人等を中心に受託されているため、顧客獲得において民間企業が苦戦している』介護保険スタート時点に、在宅介護支援センターのしっかりとした位置づけが成されていなかった結果、この様な指摘を受ける事になってしまいました。

サービスの囲い込みの問題

 介護認定訪問調査を一番多く扱っている機関は、在宅介護支援センターではないかと思います。
 認定後、ケアマネジメント依頼が来るのもこの機関でしょう。
 良く言えば、委託費が約半分になり、事業運営費の問題も有るので、つい、所属法人のサービスで間に合わせる事がある。
 悪く言えば、他に方法を知らないから、所属法人のサービスを勧めている・・・。

 ここで、「在宅介護支援センターが介護保険実施後も在宅介護支援センターである為に」を再掲します。参考にして頂きたいと思います。

在宅介護支援センターが介護保険実施後も在宅介護支援センターである為に

 在宅介護支援センターは言うまでもなく、行政からの委託事業です。
 ケア・マネジメントを実施する機関でありながら、介護支援専門員(ケア・マネジヤー)がケアプランを作成する様になると、その特徴が今一つボヤけてしまっているのではないでしょうか。
 又、単なる行政の調査機関や便利屋になってはいないでしょうか。私は次に述べる重要な役割を持っていると考えています。

 支援センターには地域を「福祉目的を持って組織化する」という重要な役割があります。
 私が台帳を町内(民生委員)単位に区分したのもその為です。
 地域の福祉事情を一番良く御存知なのは民生委員さんだと思います。
 又、町内会長や老人クラブの会長さん、福祉活動員さんでも良いのです。
 地域と支援センターのパイプ役になっていただける方々とのプライバシー以外の部分で情報交換が必要になってきます。

 地域には色々な方々が生活しておられます。福祉ニーズがありながら、ひっそりと生活しておられる一人暮らしや老人世帯の情報は、待っていても飛び込んではきません。
 待つ福祉から、発見する福祉へ。それが在宅介護支援センターの重要な役割の一つだと考えます。

 次に、各種サービス機関との連携を密にしながら、その持てる機能を最大限に引きだす必要があります。
 サービス機関に所属しておられる支援専門員の方は、自分の施設の分野については熱知しておられますが、果して他の分野の機能を充分に引き出す事が出来ているでしょうか。
 自分の施設関連のサービスで間に合わせてはいませんか?利用者に最も適したサービスを受けていただく為にも、地域におけるあらゆる社会資源をネットワーク化して、その情報源になる事も、支援センターとしての重要な役割であると考えます。
 そして、その社会資源の質・量共に限りなく増やしていく努力も重ねていかなければならないとも考えます。

 具体的には、民生委員からの老姉妹世帯の情報から、リウマチの妹に支援の手を差し伸べた事があります。
 同じく、老夫婦の夫が特養ホーム入所になった事が引き金になり、うつ病になった妻への支援もありました。
 又、病気の老親を子が病院から連れ出し、医療を受けさせない事件もありました。
 又、老夫婦で同様なケースもあり、妻の足には大きなアンカの火傷を作ってしまいました。
 又、夫が妻の重度アルツハイマー病を認めようとしなかった事もありました。
 これらはみんな地域の方々の情報でした。
 いずれも、ただサービス調整で解決する問題ではありません。
 その原因をいかに取り除くかという、ソーシャルワーカーの目と、医療・保健の角度からの適切な判断が必要でした。

 又、元気な重度痴呆症の方を入所対応出来る施設が県内には無くて、隣県の施設にお願いしたという残念な想いをした事もあります。
 これは、在宅介護支援センターが先頭に立って利用出来る社会資源を増やしていく上で、必ずぶつかる問題であり、解決に向けて努力していかなければならない問題ではないかと考えております。

 地域の抱える介護ニーズを底辺で支える逆ピラミッド型の図式を常に頭に措いて仕事にあたっておりました。
 それでもなお、誰も知らない、表面化しないケースがある事を信じて、ニーズの発見に努めておりました。

 在宅介護支援センター職員は、ケアマネジャーの前に、ソーシャルワーカーとの自覚を持って頂きたいものです。
 介護保険は、数ある社会資源の一つです。

解決策はあるか

 間違いを、間違いと気付いた時点で方向修正すれば、解決できるでしょう。
 全国何万何十万の法人の中には、福祉理念に燃えている経営者もあれば、儲け主義に走っている法人もありましょう。
 その点検と、委託するにふさわしい法人の選別を、医療・保健・福祉一丸となって、地方を指導できるのは、厚生労働省しかありません。
 勿論、縦割り行政の弊害を取り外してください。
 その上での指導です。
 ケアマネジメント・リーダー事業にその意味も含まれていることを期待しています。
 適正な委託費が支払われれば、囲い込みの問題も無くなるでしょう。地域のネットワークも芽生えると考えます。

提 案

一、在宅介護支援センター委託費を介護保険前の水準で支払う。
二、ケアプラン作成により生じた報酬は、委託元の地方行政機関の収入とする。
三、その他、国が地方へ下ろす「地域の連携」に関する事業予算は、地方行政機関への予算付けとし、委託先により、各々事情を考慮するものとする。

 以上内容を1000字にまとめて、厚生労働省にメールでご提案しましたので、ご報告します。
                     2002・3・23

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