疥癬記事を送って頂きました。

大阪読売の原記者のご好意で、疥癬に関する記事を送って頂きました。
非常に貴重な内容ですのでご紹介いたします。

原@大阪読売です。
疥癬について、先ごろ記事にまとめました。
感染被害が非常に多くて、起きると深刻なわりに、的確な考え方・情報があまり伝わっていない分野なので、参考にアップします。
記事の内容・情報の正確さは、ご心配なく。
(この手の記事は専門家にも目を通してもらうようにしています)

念のため補足。疥癬の集団感染は、不衛生だから起きるわけではありません。
(以下は、非営利サイト転載可)

■「疥癬」が病院、高齢者施設で流行  湿疹と誤診…集団感染
 国の対策強化急務
 02/06/29:大阪読売健康面

 ヒゼンダニという小型のダニが起こす皮膚病「疥癬(かいせん)」が病院や高齢者施設を中心に流行し、在宅の高齢者にも広がっている。湿疹(しっしん)と誤診して漫然とステロイド剤を塗った結果、免疫力が低下して重症型の疥癬になってしまい、集団感染に発展するケースが目立つ。不適切な治療に加え、健康保険で使える有効な治療薬の乏しいことが拡大の要因で、国の対策強化が求められている。    (原 昌平)

 ■猛烈なかゆみ
 ヒゼンダニは体長0・4―0・2ミリ。感染して一か月ほどたつと赤いブツブツが胸、腹、腕、太ももなどにでき、陰部などに小さなしこりを作ることもある。
手のひらや指の間には線状の「疥癬トンネル」を作って産卵し、約二週間で成虫になる。    かゆみは激しく、とくに夜は眠れないほどだ。しかし湿疹や皮膚炎との見分けは難しく、診断を確定するには、顕微鏡で虫か卵を見つける必要がある。
 「潜伏期間があり、病院や施設で発生をゼロにするのは難しい。早く見つけてきっちり治すことが大切だ。定期的な診察日かアドバイザーを決め、皮膚の症状は必ず専門医が診るようにすべきだ」と夏秋優(なつあきまさる)・兵庫医大助教授(皮膚科)は強調する。

 ■ノルウェー型警戒
 ヒゼンダニは皮膚を離れて長くは生きられないため、通常の感染は、肌と肌の接触か、使った直後の寝具や衣類に限られる。性感染、家族内感染のほか、保育所や合宿などでもうつる。看護・介護スタッフの感染から他の患者に広がることもある。職員の感染では昨年、東京の介護福祉士が労災認定された。
 「でも普通の疥癬なら、隔離など特別な対策はいらない。薬を塗り、長時間の肌の接触を避ければよい」と、東京女子医大の牧上久仁子医師(公衆衛生)は過剰な反応を戒める。
 問題は、免疫力の落ちた人に多い「ノルウェー疥癬」(角化型疥癬)という重症型だ。ダニの個体数がケタ違いに多く、角質化した皮膚がカキ殻状になり、かけらが飛び散る。感染力は強く、うつると二週間程度で発症する。
 こちらは個室隔離が欠かせない。スタッフは手袋とガウンを着け、寝具や衣類は熱湯で、部屋はピレスロイド系殺虫剤で消毒する。接触した人は予防治療を受けるのが望ましい。

 ■安易な治療懸念
 「集団感染のほとんどはノルウェー疥癬が感染源。だから普通の疥癬をノルウェーにしないことが肝心なのに、ステロイド剤を安易に使う施設が多い。数十人規模の集団感染はざらにあり、大学病院も例外ではない」 東京・九段坂病院の大滝倫(のり)子医師(皮膚科)はそう嘆く。大阪市内の病院で今春、患者と看護婦計十人が発症したのもステロイド剤の使用が発端だった。
 疥癬は感染症法による届け出義務がなく、全国的な実態調査もまだないが、大滝医師らの一九九六年の調査では、首都圏の特養ホームの79%、養護老人ホームの45%が集団感染を経験していた。

 ■新薬の導入を
 大滝医師によると、普通の疥癬の治療はクロタミトンかイオウの軟こうが基本。
ダニの死滅を確認するまで十―十四日間、肩から下にくまなく塗る。よく使われるイオウ入浴剤は効果が弱いわりにかぶれやすい。
 ノルウェー疥癬だと、これらの薬では治らない。承認外の薬品を医師の責任で使うしかないが、「γ(ガンマ)―BHCなど副作用の強い薬品を医師でない者が勝手に塗るなど、危ない事例もよくある」という。
 専門家は、海外で重症型に効果を上げているイベルメクチンやペルメトリンの早期導入を強く要望している。とくにイベルメクチンは日本で動物用薬として開発されたもので、毒性に十分な注意が必要だが、内服なので塗る手間はかからない。現在は熱帯病向け希少薬研究班の保管施設に頼めば入手できる。

◇写真=皮膚にトンネルを掘って産卵するヒゼンダニの顕微鏡写真。体長は0.3ミリ前後と小さい(石井則久・国立感染症研究所生体防御部長提供)

 ……………………………………
     《疥癬の2つのタイプ》
     普通の疥癬   ノルウェー疥癬
かかる人 だれでも    免疫低下した人
ダニの数 1000以下  100万〜200万
主な症状 丘疹、結節   角質がくず状に
かゆみ  強い      個人差が大
発症部位 肩から下    頭に及ぶことも
感染力  弱い      非常に強い
個室隔離 不要      必要


     《疥癬の主な治療用薬品》
薬品名(商品名) 形   効果と副作用      種別と入手方法

沈降イオウ   軟こう  効果は小。幼児や妊婦  保険適用。医療機関
             も使えるが臭気と刺激  で調合

イオウサリチル酸 軟こう 効果は小。幼児や妊婦  保険医薬品
チアントール       も使え、刺激は少ない

イオウ剤    入浴剤  効果は小。かぶれや乾  市販薬(薬局・薬店)
(ムトウハップ)     燥が起きやすい

クロタミトン  軟こう  普通の疥癬なら効果。  保険医薬品
(オイラックス)     かぶれることもある   (疥癬用には未承認)

安息香酸   ローション 普通の疥癬なら効果。  試薬として販売。
ベンジル         刺激性がある      医療機関で調合

フェノトリン  粉末、  効果は小。かぶれやすい シラミ駆除用の市販薬
(スミスリン) シャンプー

γ―BHC   軟こう  効果は大きいが、毒性  殺虫剤としては禁止。
(リンデン)       が強く、細心の注意必要 試薬で販売

ペルメトリン  軟こう 効果は大きく、毒性は   個人輸入(農薬、動物
            弱いが、かぶれやすい   用には国内で販売)

イベルメクチン 内服  効果は非常に大きいが、 別の寄生虫薬として申請中
            毒性が強く、細心の注意 請中。研究班が無償提供
 ……………………………………
 <イベルメクチンが入手できる西日本の施設>
 名古屋市立大医学部医動物学教室、京都府立医大医動物学教室、大阪市立総合医療センター感染症センター、りんくう総合医療センター市立泉佐野病院内科、鳥取大医学部医動物学講座、愛媛大医学部寄生虫学教室、福岡市立こども病院感染症センター、長崎大熱帯医学研究所、宮崎医大寄生虫学教室、琉球大医学部第一内科
※他の地域は、国立感染症研究所感染症情報センター・マラリアWEB「熱帯病に対するオーファンドラッグ開発研究」班の施設を参照
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html

 <疥癬の情報サイト>
◇国立感染症研究所「病原微生物検出情報月報」の特集

http://idsc.nih.go.jp/iasr/iasr-gg1.html
◇杉浦皮フ科(愛知県江南市)
http://www.dd.iij4u.or.jp/~ksugi/

☆―――――――――――――――――――☆
原 昌平  hara4142@yomiuri.com          
読売新聞大阪本社・科学部                
〒530−8551大阪市北区野崎町5−9   
TEL 06-6366-1649 FAX 06-6361-0521 
携帯 090-9044-5604    
          

このページについて、ご意見、ご感想などEメールをいただければ幸いです。

HOME