「介護保険制度の核はケアマネ!」――厚労省老健局振興課・君島氏

厚生労働省老健局振興課の課長補佐である君島淳二氏に、介護保険制度や09年4月の介護報酬改定、財務省の介護給付費抑制案、ケアプラン点検支援マニュアル、理想的なケアマネなどについて話を伺った。


――ケアマネジャーについて

ケアマネさんは介護保険制度の核。ケアマネさんの質とサービスが向上することで、社会保障の基盤が出来上がる。それはものすごく大きな存在。そういう認識を持って、利用者と向き合い、ケアプランの作成をしてくれるだけで、日本の社会保障は変わると思う。また、単にケアプラン作りだけでなく、地域・町づくりの核になる人材であるし、行政と民間事業者を冷静に見られる貴重な存在だ。だから、ケアマネさんには提言者になってほしい。

厚労省老健局振興課・君島氏
厚生労働省老健局振興課の君島淳二課長補佐

本来ならば、ケアマネさんが保険者への提言者であるべきだ。もちろん1人では無理だろうから、ケアマネ連絡会などを通じて提言してくれればいいし、そうなっていくと思う。保険者に提言できるということは、行政にも提言できる。それは、なぜかというと、保険者も行政も同じ悩みを持っている。利用者はすべて高齢者だから、目的とするところはそれほどズレていないはず。ケアマネさんの意見が国を動かしているという認識を持ってもらえればものすごく頑張れるんじゃないだろうか。

日本の社会保障は人的資源に支えられており、医療・福祉の現場の人たちはレベルがとても高い。このことについて、もっとわかってほしいし、自信を持っていい。


――ケアマネと地域のかかわりについて

ケアマネさんは、仕事柄、地域の利用者とその家族の中にまで深く入り込んでいる。その中には、共通した問題があるはず。そこで、積極的に意見を出してほしい。これは、直接、報酬につながらないことだが、ケアマネさんたちの意見で世の中を変えられるかもしれない。これは、ケアマネ冥利に尽きるのではないか。


――介護事業者について

介護事業者は、株式会社やNPO法人だが、営利を目的とした株式会社などであっても介護産業に参入した瞬間に日本の社会保障の支え手になっていると共に国民に対して責任が生じる。単なる市町村・保険者の受け手だけではない、日本の社会保障の担い手というくらいの崇高な意識と理念を持ってくると、絶対変わってくるはず。発言する機会があまりないため、この思いがなかなか伝わらないのは悔しいが、われわれ厚労省の幹部は思っている。


――保険者とケアマネの関係について

保険者の市町村と、ケアマネさんの距離が遠い。本来ならば保険者とケアマネさんがピッタリくっついている位置付けなのに、ケアマネさんが保険者から言われることは、サービスをやり過ぎて返還しろなど、厳しいものばかりだ。また、地域包括支援センター(主任ケアマネ)は単なる予防プランだけでなく、地域のケアマネとももっと接点を持つべき。そうすると、活性化するはずだ。ただ、厚労省も模索中で通知を出しても、保険者とケアマネさんが連携をとることぐらいしか書けない。こちらも具体的なことを言ってあげたいし、思いを伝えたい。


――09年4月の介護報酬の改定について

人材確保がメインの目的だから、介護報酬は上げたい。ただ、多種多様なサービスがあり、財源の問題もあり、保険料にはね返ってしまうので、すべてのサービスを上げるのは難しいだろう。従事者より、事業所のほうが苦しいと認識している。事業所の経営者が大変なのは理解しているから、うまく経営ができるようにしてあげたいと考えている。ただ、コムスン問題などがあって、コンプライアンス(法令順守)のほうが強くなってしまった。健全な経営を下支えできる部分を見ないといけない。それが実現できないと、個人の給与の話にまではなかなかならないと思う。


――厚労省の行政手法について

厚労省としての行政手法は、通達を出すしかできない。同じような内容の通達を何回も出しているが、行政手法はそれしかない。だから、訴えたい内容がなかなか伝わらないが、これを繰り返すことしかできない。そこが歯がゆいし、大変苦々しく思っている。


――ケアプラン点検支援マニュアルについて

ケアプラン点検支援マニュアルは、同僚の遠藤(課長補佐)が頑張って制作したもの。このマニュアルをケアマネさんにどう活用されるか、とても気になっている。もちろん、これが完璧だとは思っていない。はっきり言えば基礎編のキソみたいに思っているので、どんどんリニューアルし、レベルアップしていこうと考えている。ただ、こんなものは使えないという意見で終わってしまうのではなく、行政に向けてこうしたら良くなるという提言をしてほしい。だから、ケアマネのみなさんから意見がほしい。


――財務省の諮問機関である財政制度等審議会の介護給付費抑制案(介護保険給付費を要介護3以上の重度者に絞るなどの試算)について。また、公表前に厚労省に相談はなかったのか?

財務省の諮問機関が試算した内容は、トンデモない内容だ。厚労省では、身体介護と生活援助は切っても切れないものなので、単純に予算の都合で区分けをすることは考えていない。要介護度は、本人の介護度を測るために作った尺度であって、財源を分類する尺度ではない。介護度の重さで財源を切るというのは、理屈のない切り方、もちろん大反対だ。資料やデータはすべて本省から提供しているが、介護度の重さで切って、掛け算をしたのは財務省だ。財務省は、世論の反応を見ようとしたのだろうが、われわれ(厚労省)としては寝耳に水だった。

※財務省の諮問機関である財政制度等審議会は5月13日、介護保険給付費の抑制のために軽度要介護者を介護保険の対象から外した場合などの保険料や国庫負担への影響額の試算を公表した。


――最後に、君島課長補佐が考える“できるケアマネ”とは?

ケアマネさんに限らず、社会保障の担い手になっている人たちに共通していえるのは、地域に対してどれだけ目が向いているのか、自分が地域に対して何ができるのか、そして最終的には何か地域づくりに貢献してほしい。介護保険は、地域づくりにものすごくいいツールだ。まして、これから高齢者の増えない地域はないので、高齢者を前提にした地域づくりを目指す必要がある。これには、介護予防や健康づくりも入ってくる。このような視点で、ケアマネさんが担当の高齢者や家族から得た情報を保険者たる市に「10年後、20年後の行政のあり方を提言できる」ケアマネさんが理想。保険者は、なぜケアマネさんに実情をもっと聞かないのだろうかと思っている。ケアマネさんなら、高齢者や家族の不平や不満をいろいろ聞いているはず。それらの不平・不満が日本の将来の社会問題となるかもしれない。これらの懸案事項を出していただければ、国が方針を決めるときに参考になる。



■厚労省(老健局振興課)でのインタビューを終えて

厚労省老健局振興課を訪れた際、君島氏が開口一番、ケアマネさんを元気にする企画はありますかという発言がとても印象的だった。また、ケアマネの重要性についても、熱く語ってくれた。君島氏をはじめ、振興課のメンバーは介護現場や地域のさまざまな声を拾おうと、土日も講演などの地方出張で日本全国を飛び回っているという。ここ数年の厚労省は、年金などの問題があり、とかく批判されがちだが、今回のインタビューを通して感じたのは、厚労省の官僚が本当に日本を良くしようという強い信念を持って働いていることだ。



(インタビュー:ケアマネジメント・オンライン編集部 高柳/橋本、テキスト:高柳)


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