身体装飾


衣服
現在、生まれたままの姿だけで生活している人間はいない。人々は身体の全部にしろ一部にしろ、何らかの方法でそれを替えて見せるような行動をとっている。その代表的なものは衣服であり、人々はそれによって身体を掩う。衣服は身体を寒さや害虫などから防護したり、外観を美しく見せようとしたり、種族(あるいは社会・職業)の違い、階級の差、特殊な地位を示すなど、文明人にとっても未開人とあまり差のない機能を果たしている。
人間は体の一部(一般に陰部や乳房)が外部に見えないように、それを掩う目的から衣服を発達させたと良く説かれる。
衣服には。帽子や笠や頭巾など、いわゆるかぶりものが、いろいろな装身具類(それは場所によては履物)と共に用いられるのがふつうである。


縄文人がいかにお洒落だったかは、耳飾(玦状耳飾りと耳栓)、ペンダント、腕は、足飾りなどの出土により明らかである。腰飾りとして鹿角製品が時折報告されるのであるが、これが果たして腰飾りかどうか検討の余地があろう。

縄文人は耳朶を穿孔し、その穴に耳飾を挿入するという世界中の未開人(最近では文明人の間に復活)に共通した着装法を用いていた。縄文時代の耳栓には、材質、作りなどにかなりの差異がある。

縄文人が確実に行っていたのが歯の変工である。縄文人の歯の変形の代表的な方法は、抜歯と叉状研歯である。未開人の間においては、歯の変形は年齢集団の中の重要な儀式の一つで、一般に成人式と結びついて行われることが多い。縄文人の抜歯も成人式と結びついてなされたと一般に説明されているのであるが、出土する成人の全人骨に抜歯が認められない点がちょっと気に掛かる。もしこれが社会的習慣であったならば、共同社会の成員は全員その習慣に従うことが義務付けられていた筈である縄文人の場合、特定の人のみ歯の変形をするという必要があったかもしれないということを考慮する必要があるのではなかろうか。愛知県伊川津貝塚の叉状研歯のされた人骨は、数種の装身具も身につけていて、特別の人であったことを示している。

入墨ないし火傷など傷痕による身体装飾は成人式と結びつく民族史的事例が一般的であるが、縄文時代にこれらの習俗があったことを示す決定的な証拠はない。しかし土偶の文様から見て、入墨のようなものがあった可能性はある。


                     縄文文化の研究 9 縄文人の精神文化 3 第二の道具 身体装飾  高山純