かづのまつのを(葛野の松尾)
山城国葛野郡(京都市右京区)の松尾神社。松尾神社の鳴鏑を依り代とする神は、下賀茂神社の祭神と同様雷神で、雷神は農耕に関係の深い水神として信仰された。大年神の神裔に、農耕や穀物、竈などに関する神々が現れるのは当然といえよう。羽山戸神から若室葛根神までの系譜は、さ少女が田植えをし、水を注ぎ、真夏の日が照りつけ、秋には稲が成長して実り、収穫祭としての新嘗祭を行うための屋舎を新築するまでを語った、系図型の神話として興味深いものがある。(古事記・次田真幸・講談社学術文庫)

京都市西京区嵐山に鎮座する松尾神社。渡来系の秦氏が祀る神社。
松尾の神は、鳴り鏑になって川を流れ下り、オトメと交わったという神婚説話が伝えられていた。この系統の神話は、三輪山(丹塗矢)型神婚神話と呼ばれ、三輪山のオホモノヌシにも同様の神話が語られており(其の七には、オホモノヌシとセヤダタラヒメとの神婚が語られる)、始祖神話(一族の起源を語る神話)に多いパターンである。(古事記・三浦佑之・文春文庫)