どこか趣のある、レンガ造りの通りを一人ブラブラと歩く。
途中で見つけた可愛い小物のお店に入って、これがいいなとか、あれもいいのかも、と考えながら店内を歩く。
なんとなく、冒険中の買い物を思い出してつい笑みがこぼれた。エーコやフライヤと一緒に歩いていたとき、こんな服が可愛いかな?とかと、話しながら歩いていたときは女王でもなくて年齢相応の普通な少女でいられた。女王ではなく本当の自分でいられた気がした。友達と街を歩いたり、食事をつくったり、恋だってしていた。こうやって街を歩いていると、なんだかあのときのような気分になってきた。
歩いている最中に、とても可愛いお店を見つけた。そのお店は、主にガラスや銀細工の小物を扱っているらしく、ショーウィンドーにも小さなガラスでつくられた片手に収まりそうなサイズの小さな猫がちょこんと微笑んでいた。
ジタンみたい、なぜかそう思うと自然と足がお店へ向かっていた。お店に入ったとたん、ハーブの香りが広がってきた。そう、きついものでもなくサッパリした感じのよいものであった。店内は女性客向けらしく淡いピンクをベースとした可愛い内装だった。さっき気にかけていたガラスの猫はあのショーウィンドーの前に変わらず座っていた。
金色に淡い茶色が入った彼と髪と同じ色をしていて、蒼と碧中間のような空を思わせる瞳が優しく笑っている。
やっぱりジタンそっくりね、と私もまた微笑すると他の小物にも目を通す。もちろん全部素敵な作品ばかりだったけど、どうもあのねこ君が気になる。
「お気に入りのものは見つかりましたか、お姫様」
振り返るとなぜかジタンが…。
「ジタン!どうしたの?」
「君に会いにいこうと思って街歩いてるとさ、このお店にオレのお姫様を見つけたから。こっちに来てたんだな。手間も省けたし、これからデートといきませんか、姫君」
この後はジタンにリンドブルムを案内してもらいながら楽しく時間を過ごした。流石に彼の育った街らしく、いろいろな穴場や抜け道とか少しどきどきすることばかりだったけど。彼は必要なものがあるらしく、しばらくここにいてくれと言ってどこかへいってしまった。けれど、そこはとても綺麗な場所であった。リンドブルムの街が一面に広がって見える、小高い展望場。街に建っているいろんな色の屋根の上にはうっすらと雪が積もっていて、街全体が化粧をしていた。
しばらくするとジタンが小走りに駆け寄ってきた。手には小さな茶色の紙袋を持って…。
「ガーネット、手出してくれる?」
不思議に思いながらも包みを側のベンチにおいて手を出すと、ばらっとパンくずがのせられた。そのとたん、ばさばさと羽音がしたかと思うと白いハトたちが一斉にやってきた。そして、一生懸命にパンをつついてきたのだ。たちまちに、ハトたちに囲まれてしまったが、その姿が愛らしくて自然に笑みがこぼれた。
あっというまに、ハトたちはパンくずを食べ終わると、近くの手すりなどの上に降り立っていた。
しかし、一羽だけまるくなるようにジタンの肩にすわりこんでいるハトがいた。なぜか、輪にして首から下げたリボンに小さな箱が結び付けてある。ジタンはそのハトを手にのせると私の肩にそっとのせてきた。
「その箱開けてごらんよ」
箱はリボンから簡単に取り外せ開けてみると、淡い蒼碧の光が揺らめいた。
それは、さっきのお店で見ていたジタンそっくりのガラス細工であった。箱の内側にはやわらかいスポンジがつめてあり、その中で優しく微笑んでいたのだ。
「ジタン、これ…」
「割れてなくてよかったな。それのこと気にかけていたみたいだから、贈り物だよ」
「ありがとう。すごく嬉しいわ」
彼は照れくさそうに、髪をかくようなしぐさをしながら、よかったと言っていた。そうだ、私も渡さないと!ベンチに行って包みをとり、彼に差し出した。
「あのね、これジタンに…。味は自信ないけど、想いだけはたくさんこめたから。受け取ってほしいの」
「ガーネットが作ったのか!サンキュー」
子供のような無邪気な笑顔で彼は微笑んだ。この笑顔だ。私が一番大好きな彼の表情。
彼は、クリスマスプレゼントをもらった子供のようなはしゃいで包みを開いていた。そして、ケーキをみると驚いていった。
「すげぇー、ガーネットが全部これ作ったのかい?」
「クイナに教えてもらってだけど…」
彼は指にクリームをのせて一口食べると、
「ウマイよ。冒険中に作っていたクイーンズミールより格段に」
「酷いわ。あれは、初めて料理をつくったときだったからよ。ジタンの意地悪」
ぷいっと顔を背けると、彼が背中を丸めて声を噛み殺している姿が目の端にとまった。
なんだか、心が満たされた感じの一日だった。
NOVELS
これぐらいの甘さなら、書いていて楽しかったです。
でも、ジタン君行儀悪かったカモ。
まぁ、気にしないでおこう。
ちなみにガーネットがもらったガラス猫はバロン男爵のイメージ。
男爵カッコイイ〜v
これも、まともなEDのひとつ。
(2002.2.14 執筆)